教育不足の板長のごとき総理

この度の震災で被害を受けた方々にお見舞い申し上げます。

報道は地震一色でして、伊藤リオンが東京地裁で懲役1年4か月の実刑判決を受けましたが、もはや「え、リオンって誰だっけ?」と思わしめるような、小さな扱いで済まされています。

未曾有の大災害を前に、法律家のブログとしてはどんなアプローチが可能かを考えあぐねた末に、ここはひとまず雑談でも書いてみることにします。

居酒屋評論家として有名な太田和彦さんが、ダメな店の典型は客の前で店員を叱る店だ、とどこかで書いておられ、私もまさにその通りだと思います。

少し高級な店で、板長が客の前で若い板前さんを叱りつけて、そのあと板長が客に「いやすいませんねえ」と笑顔を作ってみせるようなことがあります。

板長としては、仕事は厳しくやっていると見せつけたいのだろうけど、理由は何であれ、食事中に人が叱られているのを見せられると、お酒や食べ物が不味くな
るし、何より、営業中に店員を叱らないといけないのは、普段の教育ができていない証拠だと、そんなことを書いておられました。

私が菅総理に対して気色の悪さを感じるのも、まさに同じ理由です。

菅総理は今般の原発の問題で、東京電力の本店に乗り込み、職員に「どうなっているんだ」「覚悟を決めろ」などと、報道陣に聞こえるように怒鳴りつけたそうです。そのあと記者会見で国民に対し「心配をおかけします」などと述べたとか。

少しは法律家らしいことも書きますが、災害に対する国の責務がどうあるべきかは、法律にきちんと書いてあります。
昭和34年の「伊勢湾台風」を受けて昭和36年にできた「災害対策基本法」がそれで、さらに平成11年には「原子力災害対策特別措置法」という法律が定められています。

詳細は省きますが、これらの法律によると、国は、原子力災害の予防や事後対策のために必要な措置を講じなければならない、と定められています。

菅総理をトップとする日本国政府は、原発が暴走しないよう、関係省庁や電力会社に然るべき指示をして安全な仕組みを確立し、もし事あらば速やかに対処できるような体制を作っておかねばならなかったのです。

今回の東京電力の対応は、確かに素人目に見てモタモタしている印象を受けますが、それでも彼らは現場で文字どおり命がけでやってくれているのだと思います。
そして彼らが命を賭けないといけないような状況に陥らせた最終的な責任は、法律を読む限り、どうしても政府にあると考えざるを得ない。

その政府のトップが、自らの職責を果たさなかったことを棚にあげて現場を怒鳴りつけるという光景に、普段の教育をしないくせに板前をしかりつける板長と同じような不快感を持ってしまうのです。

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