「マスク会食」は義務化されたのか

大阪市はじめ6つの市にて、本日(令和3年4月5日)から、「まん延防止等重点措置」が適用されます。

いま大阪で話題になっているのが「マスク会食」が「義務」になるのか、という点であり、これについて少し調べてみました。

長くなるので結論を先に言いますが、「マスク会食」の義務を具体的に明記する条項はないが、解釈次第では根拠があるとも読める、ということになりそうです。

結局どうなるねん、ということが知りたい方は、下の「2」の項目以下のみ読んでください。

1 法律・政令の解釈について

いわゆる「新型コロナ特措法」と言われるのは、「新型インフルエンザ等特別対策措置法」(以下「特措法」)という従来から存在する法律であり、これが新型コロナにも適用されているというのは、当ブログでも昨年紹介したとおりです。

緊急事態宣言とまん延防止等重点措置は、何が違うかと言うと、私の理解では、前者は全国的に感染拡大が見込まれるときに適用され、後者は特定地域に症状が見られる場合に、そこから他の地域に蔓延することを防ぐために適用される、というものです。

で、今回、特措法の31条の4から6に「まん延防止等重点措置」という項目が加えられました。

その、31条の6の1項には、知事は、事業所(今回は主に飲食店が想定されているでしょう)に対し、営業時間の短縮その他「政令で定める措置」を要請できるとあります。

その要請に従わない事業所には、3項で「命令」できるとあります。この命令に違反すると「20万円以下の過料」という罰則があります(特措法80条1項)。

時短以外に何を要請(場合によっては命令)できるかというと、「新型インフルエンザ等特別対策措置法施行令」(以下「施行令」)という、内閣が作った政令があり、その5条の5で、いくつかの措置が定められています(ネット検索で、政府のサイトで全文を参照できます)。

その6号は「入場をする者に対するマスクの着用その他の新型インフルエンザ等の感染の防止に関する措置の周知」です。

これは、例としては、飲食店が貼り紙をして「マスクをしていないお客さまは入店をお断りします」と周知するようなことを想定していると思われます。

続く7号で「正当な理由がなく前号に規定する措置を講じない者の入場の禁止」とあります。

例としては、店主が、マスクをしていない客の入店を拒否するようなことが想定されているでしょう。

それから、店内でマスクなしで大声で騒いでいるグループには出て行ってもらうということも、この7号で法的根拠が与えられます。

知事が、飲食店の店主に、今後こういった対応をきちんとしなさい、と要請すること自体は、わからないこともないです。

問題は、この6号・7号で、知事が、飲食店の店主に対し「食事中にもマスクをするよう周知せよ」「食事中、食べ物を口に運ぶ以外の場面でマスクをしない客は退店させよ」と命ずることができるか、ということです。

吉村知事は、大阪市内でマスク会食を義務化すると言っているわけですから、「できる」という解釈をしているわけです。

しかし、口に物を運ぶことが当然の前提とされている飲食の場で、それ以外のときにはマスク着用を命じる(結果としてマスクを上げ下げすることになる)ことを、この政令が想定しているという解釈には、やや疑問を感じます。

仮に、そのような解釈が成り立つとして、実際の運用がものすごく大変なことになると思われます。

たとえば、酒肴を口にしてから、次にお酒を口に含みたい、というときに、その合間もマスクをしていないといけないのかとか、何秒間だったらいいのかとか、陰気な人同士が黙って酒を酌み交わしているときでもマスクが必要なのかとか、その目安が示されていないから、いちいち店主が判断しないといけなくなる。

それから、とある客がたとえば「食事中にマスクを触るのはむしろ手が外気やウィルスに触れることになるという指摘もあり、私はそれが怖いので、マスクは外します」と言ったとしたら、これは、マスクを着用しないことの「正当な理由」になり、マスクをしないことを認めざるを得ないのではないか。

マスク会食を厳密に求めれば、おそらく客も気分を害して離れていく。客を大事にすればマスク会食を緩くしか求められず、その結果、大阪市が今後やるらしい「見回り隊」にその様子を見られれば、処分(命令から過料へ)の対象にもなりかねない。

施行令が、飲食店の店主に、そこまでのリスクを負わせることが認められるのか。憲法論的に言えば「営業の自由」の侵害になるのではないか。

なので、施行令を根拠に、マスク会食を要請または命令できるというのは、私は、解釈としては間違っていると考えております。

2 今後、どうなるかについて

ただ、解釈問題はさておいても、特措法上は、まずは要請(お願い)、それが功を奏しない場合に命令(義務化)、という経路をたどります。

昨年、パチンコ店に休業要請を出して、従わないごく一部の店に休業命令プラス店名公表という経緯がありましたが、あれと同じです。

ニュース等では「マスク会食義務化」などという言葉が使われ、吉村知事もあたかも、すでに「義務」が発生しているかのような言い方をしていますが、現在はあくまで「お願い」の状態です。

飲食店主においては、名指しでの「命令」を受けない以上は、いきなり過料20万円を払わされることはない点は、よく理解しておいてください。

個人的には、私が出入りするような飲食店は、小さい規模の、客も1、2人で来るような人が多い店なので、そういう店においては、マスク会食が要請を越えて命令になるようなことはないと考えています。

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