強制起訴 初の無罪判決を受けて 1

強制起訴事件で無罪判決が出ました(那覇地裁、14日)。

 

強制起訴とは、簡単におさらいすると、検察が起訴しなかった事件に対し、検察審査会が起訴すべきだと決議すると、検察はその事件を起訴して刑事裁判に持ち込まないといけなくなるという制度です。

検察審査会は国民から選ばれる審査員で構成され、かつてその決議には法的な拘束力はなかったのですが、近年の法改正で制度が変わりました。

検察が起訴するつもりのない事件でも、強制的に起訴させられるから強制起訴というのだと思うのですが、あくまでマスコミ用語で、法律上はそんな用語はありません。

 

これも以前に述べましたが、起訴するしないを、検察審査会の多数決で決めるということに、私としては疑問を感じなくもありません。もっとも、この制度に意義があるとすれば、グレーゾーンの部分にある事件について、裁判所の判断を仰ぐことができる、ということにあるでしょう。

たとえば、裁判所は、90%くらいの確実さで「こいつが犯人だ」と思えば有罪判決を出すとしたら、検察はやや慎重に、95%くらいの確実さがないと、起訴しないかも知れない。無罪判決というのは、少なくともこれまでの考え方からすれば、検察側の「失態」であるからです。

ですから、これまで、90~95%のところにある事件は、裁判に持ち込めば有罪にできるけど、検察が慎重になって起訴せず、不起訴でうやむやになってしまう、ということもあったと思います。それを起訴に持ち込んで、有罪とはっきりさせるという意義はある。

 

しかし一方で、容疑の度合いが89%以下の事件であったらどうか。これは裁判に持ち込んでも有罪にはなりません。それでも検察審査会が起訴すべきだと決議すれば刑事裁判になる。そして無罪判決が出る。今回の事件がまさにそういうものでした。

 

ちなみに事件の内容は、会社の未公開株を買えば将来確実に値段があがるからと言われて株を買って損をしたという、詐欺事件でした。

詐欺が成立するには、犯人が最初から騙すつもりだった(価値のない株であると知ってて売った)ことを立証する必要があります。だから、「結果的に株価は上がりませんでしたが、最初は会社の業績もよく、株価は上がると思っていました」と言われると、「騙すつもり」だったことの証明ができず、無罪にならざるをえない。

この手の事件は、もともと、有罪に持ち込むのが難しい部類に入ると思われます。

 

今回の無罪判決を受けて思うところについては、次回に続く。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA