前回の続き。
PTAというのは法的に言えば「社会教育関係団体」という団体の一種であることがわかりました。私も昨日知りました。
そして、われわれ国民は、ある団体を作ったり、団体に加入したりしなかったりするのは自由で、入りたくもない団体への加入を強制されることはありません。
結社の自由というもので、憲法21条1項には「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」と定めてあります。
もっとも、例外は多々あります。
たとえば私たち弁護士は、司法試験に受かって司法研修所を卒業しても、それだけでは弁護士としての業務ができません。各都道府県の弁護士会を通して日本弁護士連合会(日弁連)に加入し、その名簿に登録する必要があります(弁護士法8条・9条)。つまり、弁護士会と日弁連に加入することが強制されています。
私は、日弁連が出してる意見書(特定秘密保護法を廃止せよとか、死刑制度を見直せとか、取調べを可視化せよとか)には、たいてい反対の立場なのですが、だからといって日弁連の登録をはずしたり、弁護士会費を納めなかったりすると、弁護士として活動できなくなります。
その理由はいろいろありますが、カッコよくいうと、我々弁護士は時として国家権力を敵に回して戦わないといけないこともあるので、国や省庁の監督下に置かれると、国家権力にとって好ましくない弁護士が資格剥奪されるかも知れない。だから弁護士の統制や監督は弁護士会と日弁連が行う必要があり、弁護士はそこに所属しなければならない、ということです。
そういう例外を認める理由がない限りは、団体への加入・非加入は自由です。
学校や幼稚園のPTAにも、特に強制加入を認めさせるべき理由が見当たらず、そのため、公立学校や幼稚園が保護者にPTAへの加入を強制すると、憲法違反ということになります。
この点は、私が改めて述べるまでもなく、多くの方は気づいていると思います。
それでも、入学説明会のときに何となくPTA活動や会費の説明があって「よろしくお願いします」と言われて、そんなものかと聞き流しておいて、知らない間に加入していたことになっていた、というのが、多くの方にとっても実情だと思います。
説明があって特に断らず、文句も言わずに会費を支払っていたのだとすれば「黙示の承諾」があったと言えそうです。
ですから、前回紹介したPTA会費を返せという裁判では、PTAに入る義務がないのはその通りだけど、特に拒否もせず会費を払ってきたのだから、今さら返せというのは認められませんよ、ということになるのではないかと思っています。
では、さらにさかのぼって、入学説明会の時点である保護者が「うちは入会しませんよ」と明言したとしたらどうなるのか、この点は次回検討します。