一市民の見た「大義なき市長選」 1

この3月に、大阪市長選挙が行われるということで、わが大阪市はいろいろとゴタゴタしています。

今回の選挙に至った直接の事情は、これまで橋下市長や維新の会と友好的関係にあった公明党が離反し、それに橋下市長がブチギレて再選挙を言い出したわけです。「ブチギレ」などとは稚拙で品のない表現だと我ながら思いますが、今回はまさに「ブチギレ」という表現がピッタリきます。

このへんの事情を、一市民の観点から、少し書かせていただきます。

 

以前、公立幼稚園民営化の問題に絡んで、昨年11月の大阪市議会にて、民営化条例案は、維新の会以外の政党がすべて反対したため、(ごく一部の廃園等を除いて)否決されたと書きました。

しかしその後、一部保護者や市会議員からの話として、橋下市長と維新の会は今年の2月に民営化案を再提出すると聞きました。維新の会は昨年11月の否決後、公明党にしきりに秋波を送っているため、今度は可決される見込みが出てきた、という話も聞きました。

 

なお、今回のゴタゴタで、市政がこのように一部政党の密室での「談合」によって進められていることも明らかになりました。

補足ですが私自身は、市民の利害の調整の場としての談合を否定しません。しかし、「公開討論会」が好きな橋下市長が、実際には談合を繰り返しており、そして談合での密約(公明党が維新の会に協力するという約束)を破られたと言ってブチギレているのが滑稽に感じます。

 

11月に否決されたばかりの幼稚園民営化案を、3か月後の2月にまた提出して通るのか、誰でも疑問に思うでしょうけど、実際には上に述べたとおりの「談合」が行われていたわけです。でも、橋下市長もさすがに「談合により今回は可決されました」とあからさまに言うことはできない。

これを正当化する方法は2つです。1つめは「条例案を練り直して、誰もが納得できる民営化プランを示すこと」です。しかし、橋下市長も維新の議員も、そこまで頭は良くないので、3か月間で条例案の練り直しをするなど不可能です。

もう1つの方法は「社会情勢が変化したと示すこと」です。橋下市長はこちらを取りました。具体的に言うと、障害を持つ児童を、私立幼稚園でも受け入れることができるための、体制づくりです。

 

公立幼稚園のなくすことへの批判として、新聞などでもよく報じられていたのは、私立幼稚園は経営効率や収益を重視せざるをえないので、障害児を受け入れてくれなくなる、ということでした。

だったら、そういう状況をなくせばいいのでしょう、と橋下市長は考えたのです(私がここで述べてきたとおり、民営化の問題はその点だけはないのですが)。

私立幼稚園でも障害児を受入れできるように、橋下市長は何をしようとしたか。

まず、私立幼稚園のいくつかを指定し、そこに障害児の受入れ義務を負わせるのです。私立幼稚園側が「受入れできる体制にないのですが」と言ったとしたら、補助金を出したり、園内に介助などの設備を作れるよう金銭的援助をします。

さらに「そんな教育ノウハウを持った教員がいないのですが」という私立幼稚園のために、そこの先生を公立幼稚園で研修させる制度も作ろうとしました。

 

かくて、公立幼稚園を潰して予算を浮かせる、ということを実現するために、障害児の受入れのため私立幼稚園に新たな予算をつけ、またそこの教員を公立幼稚園で学ばせる、というわけですが、おかしいと思われませんでしょうか。

それなら、最初から公立幼稚園を潰す必要はないじゃないか、と多くの人は感じると思うのです。

結局、そうした制度づくりも、市長選挙が始まるために途中で放棄され、今は宙に浮いた形になっているのです。

次回に続く。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA