小さい記事ですが、入水自殺のニュースがありました。
大阪で、20歳の女性が、交際相手の男性(31歳)に心中しようと持ちかけて海(二色の浜)へ一緒に入り、男性は水死、女性は助かったそうです。
入水自殺と言いますと、私が思い出すのは安徳天皇です。
源氏の挙兵後は平家にかつがれて都落ちし、壇ノ浦の戦いで平家が滅びるとき、安徳天皇は母ら平家一門と共に海に飛び込みます。
冒頭のニュースでも女性が生き残ったというので、安徳天皇と建礼門院みたいな話かと思っていたら、生き残った女性は、「自分が死のうと持ちかけた」そして「気が付いたら自分だけ砂浜で倒れていた」と言っているそうです。
誰しも「え?」と思う話でしょう。
事実関係の詳細も知らず、かつ弁護士の私がこんなことを言うのも気がひけますが、どうしても「偽装心中か」と疑わざるをえない。つまり心中を装って誰かを殺すというわけです。
他人に自殺するようそそのかしたり(自殺教唆)、他人が自殺しようとしているのを手伝ったりする(自殺幇助)と、7年以下の懲役とされています(刑法202条)。
これらは、他人が死にたいと思っている場合であっても、その生命をあやめることは許されるものではない、という意味で犯罪とされているのです。
ちなみに、嘱託殺人罪のほうで思い出すのは、渡辺淳一の「愛の流刑地」で、これは主人公が愛人との情交中、愛人が「首をしめて」と言うので、首をしめての性行為中に愛人が死んでしまったという話でした。弁護側は嘱託殺人を主張しましたが、より重い殺人罪が適用されました。小説・映画の中の話ですが。
では、今回の二色の浜の事件は、自殺教唆になるのか、または単純な殺人ではないのか、そのあたりの話は次回に続きます。