ハワイ道中記2016 その2

今年もまた、日本とアメリカの違いを興味深く思い知った経験がいくつかあったので、そういう話を書きます。

状況を具体的に書かないとニュアンスが伝わりにくいので、少し詳細に書きますが、こういうやり取りがありました。
JTBのツアーでワイキキ市内のホテルに行くと、現地サービスとして、ホテルのプールサイドで昼食(おにぎりやカップヌードルなどの軽食)を無料で食べることができます。完全に日本語で会話できますし、プールサイドで食べるおにぎりやカップヌードルというのはなかなか旨いもので、毎年利用しています。

今年は到着当日のチェックイン前にそれを利用しようと思ったのですが、所定のカード(JTBのツアー客に渡されるカードで、これを示すことでいろんなサービスが得られる)を、ベルボーイに預けたトランクの中に入れたままだったので、示すことができませんでした。
なので、プールサイドのJTBのブースで現地職員(たぶんハワイ在住の日本人女性)にそういう事情を話して「今はカードを持ってませんが、おにぎりもらえますか」と言ったところ、その女性職員は、
「では今回はあげますけど、次からはカードを持ってきてくださいね」と言いました。

この言い回しは、文法的には全く間違っていませんが、日本ではまず聞かない言い方です。
無料の昼食と言っても、こちらはJTBに料金を払ってきている客であり、客に対して店側が自分の扱っている商品を「あげる」という言い方は、日本国内ではまずしません。きっと「差し上げる」というでしょう。
当然ながら、その従業員を批判する意図では全くありません。ハワイではそういう言い方が当たり前なのです。その違いを書こうとしています。

日本では、目上と目下、客と店など、それぞれの立場に応じた、言葉使いと振舞いが要求されます。「あげる」という言い方は、子供の友達同士の間くらいでしか使われず、店員が客に言うものではありません。
もちろん、客にも相応の振舞いが要求され、金を払っているからと尊大にする客は「無粋」として軽蔑されます。
ハワイを始め、アメリカ圏では、そういう「立場に応じた振舞い」というのはやかましくないのでしょう。

 

また一方で、こんな経験もありました。
あるコンビニエンスストアで、私の妻がビールを買おうとしました。向こうでは、アルコールを買う際、年齢制限があって、パスポートか免許証を見せるように言われます(日本の免許証で良いのですが、きっと、それが読み取れる程度のマニュアルが周知されているのでしょう)。

ではこのとき、パスポートも免許証もないとどうなるか。
日本のコンビニでは、レジ画面の「20歳以上です」というところにタッチするよう求められますが、私のように明らかな中年だと、店員が勝手にタッチしてくれることが大半です。
妻はハワイのコンビニで、パスポートと免許証を持参しなかった結果、いろいろ食い下がったようですが、ビールを売ってもらえなかったのです。日本国内だと、なんと融通の利かない対応かと、誰だって感じるでしょう。

向こうでこういう対応が取られる理由としては、ハワイの現地人にとって、外人である我々の年齢は判別しにくい、ということもあるかも知れませんが、たぶん何よりも「決まりだから」ということにあるのだと思います。
アメリカのように、歴史が浅く、人種や価値観も多様な国家の特質なのかも知れません。そういう国をまとめるために、言葉使いに関しては、立場に応じ細分化された言い回しはなく、一方で、決まりごとは定めた以上、厳密に適用される。

それを思うと、おにぎりをくれたJTBの女性職員は、根っこは日本人でした。カードがないと昼食は出さない決まりになっているけど、事情を話せば「では今回は特別に…」と例外を認めてくれた。
互いに立場をわきまえた立ち居振る舞いが要求されるけど、それを守っている限りは相手に信用され、決まりごとがあっても多少は融通も利かしてもらえる。それが日本的なのでしょう。

毎年書いているとおり、どちらが良いというものではなく、それぞれの国に応じた振舞いがあるということです。私は日本流の、きちんと振る舞っていれば融通が利く、というのに慣れています。
でも一方で、前回書いたような、バーへ行くとバーテンダーが「またマティーニか?」と快活に笑ってくるフランクさも、馴染めばきっと心地よいのだろうなと思います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA