血縁なき子供への認知の無効請求 1

遅いごあいさつとなりましたが、今年もよろしくお願いします。

昨年から、親子と戸籍に関する問題にばかり触れている気がしますが、また重要な判決が出たので、それに触れておきます。最高裁が14日、血縁のない子に対する認知の無効請求は可能であると判断しました。

 

昨年末に触れた大澤樹生の子供の問題と似通っているところがあるので、そのとき書こうかとも思ったのですが、少し異なる場面の問題ですので、触れずにおきました。今回、タイムリーな判決が出たので、この機会にあわせて触れておきます。

大澤樹生の一件は、戸籍上の婚姻関係にあり、その夫婦の子(嫡出子)と思われていたが違った、という問題で、「親子関係不存在確認の訴え」という裁判が行われることになります(「嫡出否認の訴え」の話は細かくなるので省略します)。

 

一方、「認知」とか「認知無効の訴え」いう問題は、夫婦関係にない男女とその子との間で発生します。

古くから典型的にあるのは、妻子ある男性Aが愛人との間に子供を作ってしまい、愛人から「奥さんと別れてくれとは言わないけど、この子を認知して」と迫られる場面でしょう。Aが認知届を役所に提出することで、その子とAの親子関係が発生します。

その子は愛人の戸籍に入りますが、戸籍には父としてAの氏名が記載されます。具体的効果としては、Aは子供の養育費を愛人に払う必要が生じるし、Aが死亡した場合には子供に相続権が発生します。

このように、認知というのは、婚姻関係にない男女の間に生まれた子供に対し、身分的・経済的な保護を与えるための制度といえます。

 

ですから、民法の規定では、認知の効果がひっくり返されてしまわないよう、厳重に規定しています。

民法785条では「認知をした父または母は、その認知を取り消すことができない」と規定されています。(なお、「母は」とありますが、母親は実際には子供を生むわけですから、わざわざ認知しなくても、生んだという事実だけで母親と子の関係が認められるとされています)。

認知する父と認知される子に血縁が存在する場合は、当然それで良く、あとから「認知は無効だ」などと言わせる必要はありません。

 

一方で、血縁が存在せず、かつ、父親もそれがわかっているのに、認知してしまうケースも、中にはあるそうです。

考えられるのは、成金の社長とかが、場末のホステスと親しくなってしまって、そのホステスが、誰が父親だかわからない幼な子を抱えていたとします。

で、そのホステスに「あなたの子供として認知してあげて」と頼まれた成金社長が、子供かわいさもあり、ホステスへの下心もあり、男の度量を見せようとして「よし、認知してやるよ、わしの子として援助してやろうじゃないかね、ガハハー」と認知してしまうような場合です。

 

今回の事案が、実態としてどういうものだったか、私はまだ存じませんが、最初から血縁がないのをわかっていて認知した部類のケースであったようです。

民法786条には「子その他の利害関係人は、認知に対して反対の事実を主張することができる」とあり、これに基づいて認知の無効を主張することを認めたのが、今回の最高裁の判断です。

以上を前提に、この判断をどう理解すべきかについては、次回に続きます。

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