報道としては小さな記事でしたが、大阪市の公立幼稚園民営化案が、11月29日、大阪市議会にて否決されました。
正確に言うと、59の公立幼稚園のうち19園を廃止または民営化する議案が提出されたものの、14園については否決されたということです。残り4園は廃止が可決され、1園は認定こども園に移行することが可決されました。
実はこの結論、議決の日の少し前から、私もあるルートから聞いておりました。廃止される園の関係者には大変でしょうけど、園児が減少しており、また廃止後も園児の受入れ先があるなど、事前調整の上での結論であったかと思います。
それにしても当初、橋下市長と維新の会は、59園すべてを廃止または民営化すると言っていたので、大幅な後退といえます。純粋な意味での民営化(公立幼稚園を私立幼稚園にする)という意味では実現はゼロです。
私は、息子が公立幼稚園に通っているという私的な事情もあって、幼稚園民営化には反対してきました。その理由は当ブログでたびたび述べてきたとおりです。
橋下さんのことですから、公立幼稚園の関係者と、その存続を求める保護者たち(私も含めて)のことを、「民意を無視して既存の制度と既得権にしがみつく敵対勢力」として、攻撃してくることも想定していました。と言いますか、たぶん橋下さんは常套手段として、世論をそう誘導しようとしたのだろうと想像しています。
そして、大阪市では維新の会と公明党が仲良しだったので、その連立で過半数を制して、民営化の流れは変えられないだろうと、一部保護者の間では言われていました。
その流れが変わったのは、今年の夏から秋にかけてでしょうか。「民間でできることは民間で」という掛け声のもと、橋下市長に市政改革、教育改革をやらせてみたら、失敗続きだったのは、市民の方の記憶にも新しいでしょう。
民間からの公募で区長や校長になった人たちが、自分のやりたかったことと違うと言いだして3か月で辞めるわ(港区の公立小学校長)、セクハラするわ(東成区長)で、次々と問題を起こし始めた。
橋下さんは、校長辞任については「教育委員会のせい」と言い、区長の不祥事については「指導して現場に戻す」と言って、誰も責任を取らないまま現場の混乱だけが続いた。そんな状況で、橋下さんお得意の世論誘導ができるはずもなかったのでしょう。
市議会の否決を受け、橋下さんは、改めて幼稚園民営化の方針を策定し、来年2月の議会に提出する、と言っているそうです。この問題に限らず、最近の橋下さんは、「支持率が下がっても最後までやる」と言い出したようですが、「民意」を背景に権力と既存の制度を批判してきた橋下さんが、今後は民意を無視すると公言したわけです。
民意に耳を傾けようとせず、権力を行使し続けることにこだわる人のことを、世間では「権力亡者」と言いますが、この話はこの程度にさせていただきます。
幼稚園民営化についての話は、ここで一区切りといたします。個人的な感情の入った記事でしたが、もしお読みいただいた上で大阪市政の現状に少しでも興味を持ってくださった方がいたとしたら、感謝申し上げます。