憲法改正規定は改正できるのか 1

自民党政権になって再び注目を浴びだした、憲法改正の問題について触れます。

憲法を論じるとなると、どうしても個々人のイデオロギーや政治論を反映しやすくなってしまうのですが、ここでは極力、法の規定の解説と、その解釈という観点から論じることとします。

 

いま安倍総理がしようとしているのは、憲法96条の改正です。

96条は、憲法の改正手続きについて定めたもので、憲法を改正しようと思ったら、衆参両院で、総全員の3分の2以上の多数決を取った上で、国民投票で過半数の賛成を得ないといけない、とあります。

これは、普通の法律を作ったり改正したりすることと比べると、相当高いハードルです。

 

これが普通の法律なら、過半数の賛成でいい。しかも、国会は議員の3分の1以上が出席すれば開催できる(定足数)。

つまり、衆議院は定数480ですから、3分の1(160)のさらに過半数で81。つまり81人の賛成があれば衆議院を通ることがありうるのです。

 

憲法改正の場合、定足数というものはなくて、「総議員」と条文にあるから、正味480の3分の2以上で、320人の賛成が絶対に必要となる。

いま、衆議院で与党となっている自民党の議席が295、その仲間の公明党が31で、合計326議席です。公明党が賛成すれば3分の2を超えますが、公明党はどうも憲法改正には消極的なようです。

そのこともあってか、維新の会の石原慎太郎が先日の代表質問で「いずれ公明党に足を引っ張られるぞ」と言い、安倍総理を苦笑させたという映像をご覧になった方も多いと思います。

その維新の会(54議席)と組んで3分の2をクリアしても、まだ参議院があります。

 

参議院は定数242で、3分の2以上となると162人の賛成が必要です。

現在、参議院では自民党83議席、公明党19議席で、合計102議席。維新の会(3議席だけ)を加えても到底、3分の2に及びません。蓮舫さんらがいる参院の民主党がまだ85議席とがんばっています。

この夏、参議院議員選挙があり、総数のうち半分が選挙を受けます(参議院は任期6年で、3年ごとに半分ずつ改選すると憲法に書いてあり、たぶん小学校の社会科でも習ったと思います)。民主党がずいぶん減るとは思うのですが、自民党とその他の改憲勢力を含めて3分の2に届かせるには、よほどの大勝が必要なのです。

安倍総理が、アベノミクスで株価か急上昇したのに浮かない顔をしているのは、お腹が痛いからではなく、自分自身と党に対して、常に引き締めを図っているからです。

 

そして、衆参両院で3分の2を取って憲法改正が可決されても、国民投票で過半数の得票を要します。国民投票などというのも、通常の法律を決める際には求められていません。

過去、憲法改正のための国民投票というのは行われたことがなく、その結果がどう出るかは、通常の選挙の票読みより難しいでしょう。

 

憲法を変えるというのは、それくらいに大変なことなのです。そういう大変な手続きを、憲法96条が求めているのです。ならば、その96条自体を変えてしまおう、というのが、いまの自民党の考え方なのです。

続く。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA