市立幼稚園の民営化に反対する

今回は完全に私ごとの話ですがご了承ください。

 

大阪市には「大阪市歌」というものがあり、長年、大阪市民をやってきた私はその存在すら知りませんでしたが、息子が地元の市立幼稚園に入園したとき、年中・年長の園児たちが入園式で歌っているのを聞いて初めて知りました。

どんな歌かというと、出だしは「高津の宮の昔より、よよの栄を重ねきて、民のかまどに立つ煙」(後略)と、かつて仁徳天皇がいつも上町台地の高津宮から大阪平野を眺めて、人々の家のかまどに煙が立っているか(つまり食糧が行きわたっているか)心配しておられたというエピソードにちなんだ、なかなか良い歌詞なのです。

息子は4月になったら、年中クラスの園児として新入園児を迎え、入園式でこの歌を歌わなければならないので、いま幼稚園で練習させられているらしく、家に帰ってきても断片的に歌っています。

しかし、大阪市は幼稚園を民営化して、その運営を民間の学校法人に委ねる方針のようなので、幼稚園でこの歌は歌われなくなるかも知れません。大阪市から切り捨てられようとしているのに熱心に市歌を覚えようとしている息子を見ると切なくなります。

 

そんな感傷はさておき、幼稚園の民営化の当否について少し書きます。

大阪市に限ったことではないですが、公費の負担を減らすことを目的とした公共機関の民営化は、各所で進められていることと思います。

民間にできることは民間でやってもらうと、大阪市の担当者なども言っているようですが、その理屈だと、民間でできない(またはさせるべきでない)ことと言えば、国防、警察、司法くらいでしょうから、大半の公的機関を消滅させるべきこととなります。

市役所や府庁も要らなくて、民間か、国の出先機関にやってもらえば良いことになりますが、しかしそれは地方分権の流れに反することでしょう。

 

大阪市の幼稚園に関しては、財源上の疑問があります。

とあるデータによると、大阪の市立幼稚園では、児童1人あたりに市が年間約57万円の予算をつけているそうです。私立の場合は、それが約85,000円で済む。大阪の市立幼稚園の児童は約5200人だから、全部を民営化すると、この差額に人数をかけて約25億円の予算を浮かせることができるそうです。

もっとも、幼稚園に予算をつけているのは市だけではありません。国や府も援助しています。国と府の援助は、市立だと年間わずか約500円ですが、私立だと約20万円です。私立でも親の払う保育料が高くなり過ぎないよう、国と府が大幅に負担しているのです。したがって、すべてを民営化すると、国と府の負担が10億円多くなります。

市は予算をカットできるが、国と府は負担が増える。大阪府の財政だって、この先わからないし、橋下府政でもっと悪化したとも一部報道で言われています。今後、府も予算をカットすると言い出すことは充分考えられる。

国と府が負担しきれなくなると、あとは、その年間20万円を親が払うか、学校法人に負担してもらうしかなくなります。幼稚園に子供を通わせられなくなる親も出てくるかも知れないし、また負担に耐え切れずに破綻する学校法人が出てくるかも知れない。

そんな不安を残すのですが、それでも、大阪では維新の会が勢力を保ってゆくでしょうから、公共機関の解体が今後も進んでいくでしょう。

ただ、自民党政権になって、児童教育を無償化するという話も出てきているようですが、国の予算でこれをやるというのであれば、わざわざ公立幼稚園を民営化させる予算上のメリットはなくなるので、それに期待をつなぎたいと思っています。

 

繰り返しますが、大阪市の考えは、市は負担したくないから国と府に依存するというものであって、地方分権に反することです。また市の予算と権限でもって子供を教育するということを放棄するものであって、仁徳天皇が聞いたらお怒りになることでしょう。

まとまらないままですが以上です。

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