前回の続き。
大阪市の橋下市長が、体罰問題の発覚した市立桜宮高校の体育科の試験を中止すべきだと言っているとか。「問題を黙認してきた過去の連続性を断ち切るため」だそうです。教育委員会との議論の中では「廃校もありうる」とも述べたそうです(なお、橋下市長の発言は16日の産経朝刊に基づいています)。
関係のない受験予定者から見れば、全くのとばっちりで迷惑な話としか思えないのですが、私もいちおう弁護士なので、「法的根拠」ということが気になって少しだけ調べてみました。
学校教育のことは、学校教育法にだいたい定めてあります。
その中で、学校教育法施行規則の(「施行規則」って何かというと、詳細は省きますが、法律のさらに細かい規則を定めたものです)90条5項によると、公立高校の学力検査は、都道府県・市町村の教育委員会が行なう、とあります。つまり桜宮高校の入試は大阪市の教育委員会が行なうものです。橋下市長にそれを「やめろ」という法的な権限はない。
だから橋下市長が言っているのは、あくまで「教育委員会に対してやめるよう申し入れた」というだけに留まります。
では、橋下市長は桜宮高校を「廃校」にできるのか。
これもノーです。学校教育法4条2号で、市町村立の高等学校を設置したり廃止したりするには、都道府県の教育委員会の認可が必要とあります。つまり決めるのは大阪府教育委員会です。
(ついでに、同じ4条の1号で、大学の設置は文部科学大臣の認可が必要とあります。田中真紀子が先日、私立大学の設置を認可しないと言った根拠がこの条文です)
このように、判断するのは教育委員会なのです。橋下市長は得意のやり方で教育委員会に圧力をかけていくのでしょうけど、教育委員会としては受験予定の子供たちのためにも、断固入試を行なうべきです。教師の入れ替えや廃校など論外であると考えます。
法律論は以上です。
橋下市長はまた、「学校に100パーセント問題があり、入試を続けるべきではない」とも言ったそうです。しかし、学校(または行政)に100パーセント問題があるのかどうかは、前回述べたとおり、今後きちっと検証されるべき問題です。
また、学校に何らかの問題があり、そのゆえに生徒が自殺したという事実があったとして、「入試を続けるべきでない」という結論に果たして結びつきうるのか。これから受験しようとしている人たちは、この事件と全く無関係であるのに、受験直前に多大の支障と混乱を生じさせることが正当化できるとは思えません。
このへんの話について、次回、もう少しだけ続く予定。