内閣不信任と一事不再議 1

小沢一郎が内閣不信任案を提出する構えを見せているらしい(本日の産経朝刊など)。

前提として、衆議院が時の内閣を信任しない、という決議を出すことは、憲法上、重大な効果があります。内閣は10日以内に総辞職するか、衆議院を解散しないといけなくなる(憲法69条)。議院を解散した場合でも、総選挙が行なわれたあとには、内閣はやはり総辞職しないといけない(70条)。

だから不信任決議はいずれにせよ、総理大臣以下、内閣を構成する大臣すべてをクビにする効果をもたらします。

行政のトップである内閣が、主権者である国民の意に反する行動を取る場合に、国民の代表である国会は、内閣を変えてしまうことができるという趣旨です。

 

もっとも、国会には「一事不再議」の原則があります。

「この6月に一度、不信任案を否決されているから、もう同じ不信任決議案を審議することはできない」という考え方もありえます。たぶん菅総理もそう考えています。しかしそこは、法律うんぬんでなくて常識で考えてみてください。

もしそういう理屈が通るなら、いったん不信任決議が否決されれば、それ以降、総理大臣がどんなことをしたってクビにはできず、その責任を問えないことになります。そんなことは、およそ民主国家の憲法が想定している事態であるはずがない。

たとえば、民主党でもどこでもいいですが、あるときの衆議院選挙で、ある政党が過半数の議席を取り、その政党から総理大臣が選ばれたとします。そしてその直後に、その政党の一部の議員が総理大臣とグルになって、わざと不信任案を提出します。その政党が過半数を取っているわけですから簡単に否決されます。次の会期になったら同じことを繰り返す。

するとどうなるか。その総理大臣は、衆議院議員の任期の丸4年、何をやっても許されることになります。憲法解釈としてありえない話です。


菅総理は「民主主義とは期限を区切った独裁だ」と常々から言っているらしい。たしかに憲法上、内閣総理大臣は行政のトップとして強大な権限を与えられているから、その言葉はある側面においては当たっているかも知れない。しかし菅総理が馬鹿なのは、そういう「極論」を、文字通り実行に移そうとするところなのです。

さて、一事不再議ということについて、もう少しきちんと解説したいのですが、それは次回に続く。

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