今月8日、大阪市にこういった内容の脅迫メールが届いたそうです。
「明日11月9日の午後2時20分に、大阪市の施設内4万か所に設置した爆弾を爆発させる」と。うちにも息子の小学校を通じて、保護者あてに一斉メールが届きました。
爆弾を4万発も作るほどの資金と、それを人知れず4万か所に設置し、同時に爆発させるほどの技術は、たぶんショッカーやゲルショッカーでも持っていないはずで、それくらいの力があれば、とっくに日本征服くらいはできていると思われます。ですのでこれは、明らかにイタズラなのですが。
それでも保護者は不安に思うし、学校側としても無視するわけにもいかず、その日の下校時は、先生方や親がいつもより多めに学校周辺に出て、不審物や不審者の警戒をしました。
私も、PTA会長として、下校時間に学校周辺を自転車で見回りました。
似たような脅迫メールの事件はちょくちょく起こりますが、こうした行為は刑法上、「威力業務妨害罪」が適用されることを、多くの方はご存じかと思います。刑法234条で3年以下の懲役または50万円以下の罰金です。
ここにいう「威力」とは、定義としては「人の意思を制圧するに足る勢力」のことを言い、物理的な暴力だけでなく、こうした脅迫も該当します。
「業務妨害」というのは、たとえば警察や学校関係者が警戒のために余計な時間を取らされたことを言います。
このとき犯人が「こんなイタズラを誰も真に受けるとは思わなかった、だから威力や脅迫にあたらない」と言ったとしても、それは通りません。明らかなイタズラであったとしても、社会的常識として、関係者は何らかの措置なり警戒態勢なりを取らざるをえません。
むしろ犯人も、それがわかってて面白がってやっているはずです。
学校関係者や保護者は日常的に登下校の見守りをしているのだから、別に余計な時間を取らせたわけでもないし、業務妨害にもあたらない、という弁解も通りません。この脅迫があったからこそ、普段とは異なる対応を取らされたことは否定できないからです。
私自身も、平日の事務所営業時間内に1時間ほど、見回りに時間を割いたわけで、その間、本来の弁護士業務ができず、時給に換算していくらかの損害も被っています。「いやあんたはその時間ヒマだったし、子供が好きだから見に行っただけだろう」と言われると、ある程度そのとおりなのですが、それでも事務所におれば多少、別の仕事は片付けられたはずなので。
そもそも、理論的な話をすると、判例上は、現に業務が妨害されたという結果は不要で、業務を妨害するに足る行為をすればこの犯罪が成立する、とされています。
つまり、「そんな脅迫行為をしたら世の中の多くの人の仕事の妨げになるだろう」という行為があれば、「脅迫の結果として具体的に誰にどの程度の妨害が与えられたか」ということは、必ずしも明確にされなくても、この犯罪が成立します。
(そうでないと、PTA会長がヒマな人か忙しい人かによって犯罪の成否が異なってしまいますし)
いずれにせよ、この手の愉快犯は卑劣な犯罪であるということで、犯人の処罰を望むものです。