東電の賠償責任について、続き。
東電はいくらの賠償金を払うことになるかについて。
まず東電は、1200億円までなら払えます。そういう保険に入っているからです。これも「原子力損害の賠償に関する法律」に規定があり、原子力事業を行なおうとする者は、事前に、保険会社に1200億円の保険をかけておかなければならない、とされています(7条)。
危険物を扱う者は、何かあったときの賠償に応じる準備をしておかないといけない、という趣旨で、車に乗る人が最低でも自賠責保険に入らないといけない(自動車損害賠償保障法)というのと同じです。
ただ、自動車事故なら、そこから発生する損害はだいたい予測できる。
しかし、原子炉を扱う業者にとって、最悪のケースが発生した場合の損害額は予想もつかないでしょう。
では「1200億円」の保険、という数字はどこから出ているのか。
今回の原子炉事故による被害は、どこまで広がるかわかりません。1200億円は超えるでしょうし、「兆」の単位になるとも言われます。しかし、保険会社がそんな巨額の保険金を支払うとなると会社が潰れるかも知れない。だから保険金の上限が法律で決められているわけです。
これは決して、東電の責任が1200億円に限定されることを意味しません。損害のすべてについて責任を負うけど、支払えない、というだけのことです。
しかし東電を破産させるというのも、電力の供給ということを考えれば現実的でない。
どんなときにどんな援助を行なうのか、これまで明確に論じられたことはないのですが、最終的には国費(すなわち税金)で補償がされるのでしょう。その過程で、東電が国の管理下に置かれることとなるという議論も出ているようです。破産させることができないので国有化するわけです。
このように、原子力災害による賠償については、法律はあっても先例がないため、その解釈には今後も多少の混乱が生じるでしょう。
安易な増税は許してはいけませんが、ある程度の負担は我々国民一人ひとりが負うべき使命として理解すべきです。