袴田事件 再審決定に思ったこと 3

前回、警察組織が容疑者にウソの自白をさせることがあると、お話ししました。なぜそういうことが起こるのかについて、もう少し付け加えます。

 

捕まった人がどうなるかというと、①警察署の留置場に入れられて取調べを受ける。②起訴されれば被告人となって拘置所に送られ、裁判の日を待つ。③有罪で懲役の実刑を食らうと、刑務所に送られる。ただし死刑囚は②の拘置所のままである。と前々回に書きました。

そして、袴田さんも、その他の再審で無実が確定している人も、多くは①の段階でウソの自白をさせられています。近年では、女児殺害容疑で無期懲役刑を食らって20年近く服役していた菅家さんが5年前に釈放され、その後の再審で無罪が確定しましたが、この方もウソの自白をさせられています。

 

この段階で、弁護士は何をしてたんだ? と感じた方もおられると思います。

この点、私が言うと言い訳じみてしまいますが、一般論でいうと「そもそも弁護士がついていなかった」というケースが多々あると考えられます。

もともと、日本国憲法の規定がそうなっているのです。

憲法34条には、何びとも、弁護士に依頼する権利を告げられない限り、逮捕・勾留されない(要約)、とあります。これは上記の①の段階の話です。

そして憲法37条には、被告人は弁護士をつけることができる。被告人が自ら弁護士に依頼できないときは、国が弁護士をつける(要約)、とあります。これは②の段階です。

 

①と②で大きな差があるのがお分かりだと思います。

①の、逮捕され取調べを受ける段階、つまり容疑者(法律上は被疑者といいます)の段階では、アメリカの刑事ドラマみたいに、「お前には弁護士を呼ぶ権利がある」とひとこと言えばいいのです。

容疑者のほうで「弁護士なんか誰も知りません」「弁護士に頼むお金がありません」といえば、「じゃあ、仕方ない」ということで、弁護士なしで留置場での勾留を続け、取調べをしてよいことになっています。

②の段階、つまり被告人になって裁判を受ける段階では、弁護士をつけて法廷で弁護してもらうことができます。弁護士をつけられない人は国費で弁護士をつける。これが国選弁護人です。

このように、憲法上、弁護士が必ずいないといけないのは②の段階のみです。

①の段階でもし刑事がムチャをしたとしても、②の段階では弁護士がつくし、裁判官がきちんと裁いてくれるから、無実の人がいてもきちんと見抜いてくれるだろう。と、憲法をつくる段階では、そう考えられていたようです。

 

実際には、そうはならなかった。だから再審で無罪になったというケースが、これまでにも多数でてきました。

(再審で無罪になったケースの実例は書ききれません。興味がある方は、刑事訴訟法の教科書を読まなくても、「再審」で検索してウィキペディアでもご覧いただければ、かなり詳細に書かれています)

警察が無理な取調べをし、冤罪を生んできた、その根本的な原因は、このように日本国憲法にあるのです。

続く。

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