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秘密の小箱

秘密の小箱
■ 秘密の小箱3【夜のゲイボーイ】
1.ゲイバーに来る客
2.ゲイと語る世相
3.肉体に隠された秘密
4.ゲイは今宵もミナミに立つ


夜のゲイボーイ

 大阪・難波。新歌舞伎座裏の路地で、夜な夜な1人立って道往く人に手招きしてる、ドレス姿の女性(?)がいます。
バー「シカゴ」のママ、黒森 花さん。今夜はこのママとゆっくり語ってみました。


1.ゲイバーに来る客

山内 憲之(以下「」)「お久しぶりです。僕のサントリーリザーブ、まだ残ってます?」
黒森 花(以下「」)「ホント久しぶりね、うちの店に来るの」
「ええ、このところちょっと忙しかったもんで」
「そう?隣の小料理屋はよく行ってるのに?」
「あ、気づいてらしたんですね。いつもママ、店の前で立ってるから、隣に行くときはママの目を盗んで行ってるつもりだったんですけどあっ僕は水割りにしないで、ソーダ割がいいな。ところで最近の客の入りはどうです?」
「うん、まあ、それなりに、いろんな方が来てくれてるわ。昨日は、コギャル風の若い女の子が来たのよ、はいソーダ割、わたしも一杯いただいていいかしら」
「ええどうぞ。コギャルですか。どんな風にお相手してあげたんですか」
「将来、自分がどうしたいのかわからないって、いろいろ深刻に悩んでるみたいだから、相談にのってあげたの。とにかく自分のやりたいことを真剣にやってみなさいって」
「やりたいこと、ですか。うん、ママも見るからにやりたいことをやりたいようにやってるみたいだから、極めて説得的なアドバイスではないかと思います。コギャルさんも、ママなら私の悩みに答えてくれそうだと直感的に思ったんでしょうねところでどうして僕の隣に座るんですか?」
「カウンター越しよりはこのほうが親しくお話できるでしょ」
2.ゲイと語る世相

「やっぱり、ママと同じような立場の人、つまりおかまさんも来られるんですか?」
「そうね、ミナミの同業者の人とかよく来るわよ。ショーパブの有名人とか」
「ああ、そういう人とも、おかま界のつながりがあるんですね。でもおかまバーっていうと、どうしてもショーパブとか、賑やかにショーをやってるところを想像しがちだけど、ママのところは違いますよね。カウンターがあって、静かな音楽が流れてて。
『シカゴはおかまバーのくせに暗い』っていう人もいるけど、それはおかまバー イコール ショーパブという固定観念からくる誤解なんですよね」
「うん、そう。うちは騒がしくするところじゃなくて、こうしてゆっくりと、お話をするところなのよ。私の店は『癒し系』なのねそれに、おかまバーっていうと、どうしても固定した騒がしいイメージがあるから、私は、ここはおかまバーじゃない、ゲイボーイがやってるゲイバー だと思ってるの。」 
「ゲイバーですか。おかまとゲイの違いって、どう考えておられますか。いろいろ定義の仕方はあるみたいですが」
「そうね、イメージの問題なんだけどね。でも何となくわかるでしょ、美輪明弘さんをおかまとはあんまり言わないでしょ。あの方はゲイボーイだと」
「ああなるほど、ああいう感じを目指されてるわけですか。で、そんな癒し系のゲイバー、最近多い客はどんな感じの人ですか」
「最近のご時世かしらね、会社でいろんなストレスを抱えて、愚痴を言いにくる人が多いわね。根が真面目なだけに、抱えこんじゃうことも多いんでしょうね。それから、「業者」以外でも、おかまとか、おなべとかもやっぱり多いわ」
「ああ、商売抜きにして、ホントに性同一障害で悩んでる方ですか。やっぱり、ママならそういうマイノリティの気持ちもわかってくれる、そう思ってお話しに来るんでしょうねところでどうして僕の膝なでるんですか?」
「癒しにはスキンシップも大切なのよ」
「いえ僕は今のところ取り立てて癒しは必要ないですから・・」
3.肉体に隠された秘密

「えーとアテは、うん、今日もキンピラゴボウがいいです。ママの得意料理ですか、キンピラゴボウ。いつも食べさせてもらってますけど、かなりウマイと思います。
ところで、こみいったことをお伺いしますが、ママは元来男性だということで、でも今現在は、肉体的にはどうなっているんでしょう・・? 胸は膨らんでるみたいですが」
「ええ、女性ホルモン を注射して膨らませてるのよ。そんなに大きくないけどね。でもシリコンを入れた胸よりはやわらかいのよ」
「へえ、シリコンを入れるか、注射するかで、胸の硬さが違うんですか」
「そうよ。シリコンを入れてムリに大きくすると、胸の皮膚の部分が突っ張ってしまって、そのぶん硬くなるのよ。ショーパブなんかで人に見せるための胸だったら、それでもいいんでしょうけどね」
「なるほど、ママの胸は見せるためだけの、形だけのものじゃなくて、胸としての柔らかさを伴ったものなんですね・・ということは誰かその胸触る人がいるんですか・・?」
「それは秘密」
「それから、下のほうは・・?」
「ついてるわよ。こないだ友達がとったみたいだから、今度店に来て見せてもらうんだけど」
4.ゲイは今宵もミナミに立つ

「このあたり、ママみたいなおかまバー、いやゲイバーが多いらしいですね。それ以外でも、かなりディープっていうか、なかなか一見じゃ入りにくい店が多いですよね」
「そうね、一見の客は少ないわね、このあたりの店は。だから芸能人なんかはこの辺りによく来るのよ」
「このあたりの店が、ガイドなんかに載ることも滅多にないですよね」
「そうね、でも一度、週刊誌がうちの取材に来たこともあるのよ」
「へえ、どんな取材ですか?」
「ミナミの夜の大特集だって。でも『脱いでくれ』っていうから取材お断りしたの。脱いでカウンターの上でポーズとってくれっていうのよ。どうしても私を『ミナミの夜のキワモノ』的な存在として記事にしたかったんでしょうね。そんなのお断り」
「うん、どうしても、ママのような存在は、キワモノとして扱うのが記事としては面白いかも知れない、でもママはそんなつもりでやってるわけじゃない、と。ここは純粋にバーであって、バーのマスターがたまたまゲイであったというにすぎないんだと。
バーのマスターが客の心に入り込むために、おいしいお酒を出すとか、いい音楽を流すとか、内装に凝るとか、いろんなアプローチの仕方があるけど、ママは
ゲイであることによって、客の心にアプローチしていこうということなんですね」
「うん、いいこと言うわね」
「ママが真面目な気持ちでゲイ業に励んでおられるんだということがよくわかりました。これからも夜のミナミに立って、迷える衆生を夜な夜なお店に引き込んでやってください。今日はお付き合いいただきありがとうございました」
「これで取材は終わりね。今度は取材抜きでゆっくり飲みにきてね。サービスするから。」
「は、はい、楽しみにしてます・・」







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