弁護士としての対話のあり方
〜合コンにおける対話のあり方と比較しての考察〜
――法曹として必要なことの多くは合コンから学んだように思います。
その一例を以下紹介したいと思います。
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| 1.合コンにおける対話のあり方 |
唐突ですが、いい合コンとはどんなものだとお考えでしょうか。自分が合コンに参加したとして、どんなとき今日の合コンは成功だったと思われるでしょうか。
この点、「盛り上がったかどうか」が有力な指標だと思いますが、問題はその「盛り上がったかどうか」をいかなる判断基準で判定するかです。
僕は、「どれだけ相手にしゃべらせることができたか」で判断しています。「しゃべったもん勝ち」じゃなくて、「しゃべらせたもん勝ち」です。どんな面白い話をしようが、女の子だって、一方的に聞いてばかりじゃうっぷんたまるでしょうから。
では、女の子にしゃべってもらうにはどうするか。最初はお互いに緊張してる、そこで、とにかく相手に何かしゃべってもらうために、名前とか、仕事とか、何でも質問する。それも答えやすいことから聞くことが大切です。それから、質問は具体的であること。「趣味」を聞いて相手が答えにくそうにしてれば、もう少し具体性を持たせて、「最近、休日は何をしてるか」とか「最近観た映画で面白かったものは」と聞くわけです。この、こちらの単発的な質問に相手が単発的に答えている状況、これを第1段階としましょう。
その過程で、女の子の趣味・興味のうちで自分と合う話題が出てくれば、そこで会話を膨らませることができる。それから、女の子のほうでも、話したい話題、聞いて欲しい話題があって、それをこっちが振ると、パッと顔色が明るくなって話し出すこともある。この、こちらの質問に相手がのってきてくれて、こちらの問いをきっかけとしつつも双方で会話のキャッチボールができるようになった段階、これを第2段階としましょう。
第1・2段階では、自分が質問して、相手がそれに答えるという状況が続くわけだけど、緊張がほぐれてくると、女の子のほうから積極的に、いろいろ話してくれるようになる。そういえばこないだこんなことがあってね、という感じで、職場でのグチ、生活上の諸種の悩みなどいろいろ話してくれる。この、自分から話し出してくれる段階が来れば、いちおう一安心。あとは自然に、会話が続いていきます。グチや悩みを話す子もいるけど、それもきちんときいてあげるべし。初対面の女の子に悩みを聞かされるなんて、こっちを信頼してくれていて、安心してるからのことであって、光栄に思うべきことです。この、相手のほうから積極的に話してくれるようになった段階を第3段階としましょう。この段階に至れば、その日の合コンはいちおうの合格ラインに達したと言っていいと思います。 |
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| 2.弁護士としての対話のあり方 |
弁護士として依頼者と話すときでも、相手が最初すごく緊張してることがしばしばあります。そんなときは、いきなり本題から入らないんです。無難な話題と、答えやすい質問、これでまずは相手に話しやすい状況を作ってみる。――今日はむし暑いですね、さきほど雨が降ってたようですがだいじょうぶでしたか、どちらにお住まいですか、今日は難波まで何で(交通機関のこと)来られましたか、etc。少ししゃべらせて、ある程度の会話ができるようにする。このあたりのことは、さきほどの話に合わせていうと、第1段階にあたります。
で、そろそろ、えーと今日のご相談ですが・・と切り出すわけです。本題に入るわけです。依頼者はもちろん、その本題のことで相談に来てるのですから、この段階までは問題なく進んでいくわけです。先ほどの例でいうと第2段階です。この過程においても、いろいろ質問しつつ依頼者の顔をそれとなく見ながら、何を話したがっているのか、何を問題にしてるのか、などを注意しながら、より深いところが聞けるよう心掛けます。
さらに、こちらが聞いていること、聞きたいことだけじゃなくて、事件のポイントとは関係なく、感情的な問題を思いのたけ語ってくる人がいる。先ほどの話でいうと、第3段階です。依頼者の気持ちからすればこういうことこそ誰かに聞いてほしいところだというのはわかるし、時間があればできる限りそのあたりの話も聞いてあげたいのですが、ただ、どうしても、時間の関係で、聞けることには限りがある。事件の争点と関係のないところで延々語りだす人は、ある程度セーブしてもらう必要がある。その点は、単純に雑談を楽しめばよい合コンとは異なります。
ただ、こういったことを聞いて相談の最後に、「いろいろ聞いていただいてありがとうございました。話しやすい先生でよかったです。これからもよろしくお願いします」などと言ってもらえると、とても嬉しいです。これでファースト・コンタクトは成功だな、と思います。 |
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| 3.証人尋問の場で |
法廷で証人尋問をやるときなんかでも、同じことが言えるわけです。事務所で相談してるときは饒舌に話していた人が、証人尋問の日になって法廷に証人として立つと、さすがに緊張してる。法廷の証人席に立つなんて、通常では一生に1回あるかないかだから、ムリもない。
そのときも私がやることはこれまでに述べたところと一緒です。まず答えやすいことから入る。――私からお聞きすることに手短に答えてくださいね、あなたは現在どこそこ在住ですね、あなたは〇〇株式会社で××の役職をされてますね、具体的にはどんな仕事をされているのですか・・etc。これが上記にいうところの第1段階です。証人も、話しているうちにペースをつかんでくるのか、こわばっていた表情が次第にいつもの顔になってくる。裁判官の中には、「その点はすでに証拠上明らかだから質問しなくていいんじゃないですか」とか言ってさえぎる人もいるけど、このへんの機微がわからないのかな。時間内に尋問を終わらせたいからさっさと先に進めたい気持ちもわかるけど・・。
とにかく、その段階をクリアしたら、あとは事前の打ち合わせどおり、こちらの質問に証人が答える。スムーズに尋問が進んでいくことになります。これが第2段階。
そのうち、充分リラックスしてくると、従来の饒舌さを取り戻す人もいる。質問への答えは手短に、と事前に言っておいたのに、いろいろと自分のほうからしゃべってくる。イエスかノーの結論しか求めていないのに、私はそのときかくかくの状況で、相手のほうがこれこれしたせいで、私はこうこうせざるをえなくなって・・とか延々語り出す人もいる。上記のところでいうと、第3段階まで行ってしまうわけです。でも証人尋問の場でここまできてしまうと、いろんな発言に揚げ足を取られるおそれもあるし、なにより時間制限があるから、いや、それはもういいですよ、とこちらからさえぎることになる。
合コンでは第3段階に行くと成功、事務所での依頼者との打ち合わせのときでも時間が許す限り第3段階の話につきあってあげることが望ましい。でも、証人尋問の場合は、上記のような弊害のほうが多い。なんとしてもセーブする必要がある。 |
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| 4.まとめ |
このように、状況に応じて差異はありますが、この人の緊張のレベルがどのへんにあるのか、うまく話してもらえるようにするにはどうすればよいのか、これをまずつかむことが、どんな場面であるかを問わず、コミュニケーションの出発点だと思います。そのへんの呼吸は、すべて合コンから学んだように思います。 |
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