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 私が通い始めたころ、このお店はお初天神通りの路地を入ったところにありました。

大阪でも有数の老舗の名店である、という情報くらいは仕入れて行ったので、最初のうちはずいぶん緊張しながらドアを開けたのですが、するといつも先代のマスター(現マスター天野氏の父)が、これまた有名な大きい声で「いらっしゃいませえぇっ!」「どうぞ、奥へ!」と出迎えてくれました。それで私も「こんな若造でも何だか歓迎してもらえてるみたいだな」と安心した記憶があります。

私が、たいていのバーに臆せず一人で入っていけるようになったのは、ここの先代に、客として大切に扱っていただいたことが大きいと思います。

先代が亡くなった後、店は北新地の南西部、堂島サンボアの隣に移転となり、現マスターが今も「いらっしゃいませ!」「どうぞ!」と客を迎えています。

 

さて、私は個人的に、ここの「付き出し」が大好きです。多くの酒飲みと同じく、私も飲むときには大した食べ物は要らないほうなので、あまり手の込んだものを出されると手に余るのですが、ここは別格です。

生ハムやローストビーフ、ポテトサラダなどが、小鉢に少量ずつ上品に盛られて出てきます。私はいつもこれを「おかわり」したいと思うのですが、恥ずかしくてまだやったことはありません。冗談抜きで、ここの付き出しだけは、どんぶりに10人前くらい入れて出してもらっても良いと思っています。

近年、立ち飲み居酒屋やスタンディングバーが増えている気がします。しかし、単に流行りとかカッコつけだけでスタンディング形式を取ったとしか思えないような店もままあります。立って飲むお店には、そこで立って飲む必然性がなければならない、というのが私の持論です。

バーで言えば、立って飲もうというときは手早く最初の1杯にありつきたい心境であることが多いので、酒がすばやく出てくることが必須の条件です。腰を据えてじっくり飲むというよりは、気楽に飲める雰囲気であってほしい。2、3杯とおかわりする場合でも長居するわけではないから、そこは店主やスタッフがきちんと目を配っていて、すばやく次の一杯を注いでほしい。

それら立ち飲み客特有の我がままを叶えてくれる店であって初めて、その店で立って飲む必然性が生まれてくると思います。


前置きが長くなりましたが、北新地のここ「アルルカン」は、それらをすべて叶えてくれます。マスターの佐藤氏は北新地のサンボアで修業をしておられたこともあって、スタンディングの客の扱いにも慣れておられるのでしょう。

とはいえ、じっくり飲みたい人にはテーブル席もあるし、葉巻なども置いてある。スタンディングが基本のカウンターでも、座りたい人には椅子が出てくるというのも、この店流のこだわりのなさで良いと思います。

ホームページ http://www.bar-arlequin.com/

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