裁判があれば全国どこの裁判所でも行きますが、大阪周辺以外では、やはり東京が多いです。基本は日帰りなので、東京で飲むとなると、早い時間に空いているバーに限られてしまいます。

ここ数寄屋橋サンボアは午後5時から開いていて、夕方に仕事が終わると、帰りの新幹線に乗る前に寄っていきます。

このブログで木屋町サンボアについて触れたときにも書きましたが、サンボアは現在、全国で13店を数えます。ちなみに私はそのすべてに行きました。

数寄屋橋サンボアは、堂島サンボアや銀座サンボアで長年修業をしてこられたマスターの津田さんが、サンボアの名前を名乗ることを許されて、平成22年10月に開店となりました。

 

いただいた開店パーティの招待状を見ると、ちょうどその日は東京地裁での仕事がある日でした。法廷を終えてお店に駆けつけますと開店の5分前で、店の前で待っていますと、ほどなく、津田さんの師匠にあたる堂島サンボアのマスターや、サンボア系列での兄弟子になるアルルカンのマスターが(大阪から応援に来ていた)、扉を開けて出てこられ、「どうぞ」と声をかけてくれました。

私が店内に入ると、すでにカウンターでは男性がひとり、何か飲んでおられました。ただ話を聞いていると、その人はお店のデザインや設計をした方で、いわば部内者のようでした。つまり、数寄屋橋サンボアに客として一番最初入ったのは、この私ということになります。もちろん、その日はすぐに後からたくさんの客が来て賑わいました。

 

穏やかで上品な津田さんの接客ゆえ、関西発祥というより昔から銀座界隈でやっていたバーであるかのような印象も受けますが、スタンディングのカウンターでサンボアスタイルのハイボールを飲んでいると、ああやはりここはサンボアだな、と思います。

数寄屋橋サンボアが末永く繁盛されることを、「最初の客」として応援したいと思っています。

職場から自宅までの帰り道にバーがあるのは幸せなことです。

私はかつて、鶴橋の実家から勤務先の難波の法律事務所に通っていましたが、そのころはよく、法善寺横丁や心斎橋のバーに寄り道しました。

 

今、南堀江で事務所をやっていて、昨年から、同じ南堀江に住むようになりました。職住近接は便利だけど、寄り道の楽しさがなくなってしまうことを懸念しました。特に、御堂筋から西側には、きちんとしたバーは少ないのではないかと。その後、北堀江2丁目でこの店を見つけて、懸念は解消されています。

この店は、大通りからは少し離れた場所で、地元に根ざすかのような佇まいで灯りをともしています。マスターの広田氏の雰囲気はフランクですが、仕事は極めてキッチリしています。そして出てくるお酒は濃いです。ハイボールを頼むと、たっぷりとしたグラスに、しっかりウイスキーが注がれます。

 

その日しっかり仕事をして、喉も渇き頭も疲れ、今日はよくやったなと思いながらここで飲む濃いハイボールは、まさにするすると胃の腑に収まり、2杯ほど飲んで良い感じに昂揚して家に帰ることができます。夜、帰り道にここでの酒を美味しく飲めたかどうかで、その日のがんばりを改めて確認しているというわけです。

そして朝、私は南堀江の自宅を出て、北堀江との境目にある周防町通りを通って事務所に向かいながら、北堀江のほうに目をやりつつ、今夜もパッシーナで美味いハイボールを飲むために一日がんばろう、と心に誓うのです。

私は大阪市で生まれ育ち、現在の自宅も職場も大阪市なので、暮らしのすべてが大阪市内で完結しています。飲みに行くのも大阪市内が大半であり、東京や京都に仕事や観光のついでで飲みに寄ることはあっても、大阪市の近隣都市で飲むことはほとんどありません。

その数少ない例外が、大阪府堺市、中百舌鳥駅の近くにある「ウイスキーキャット」です。

 

この夏、堺で仕事をしたついでに、堺東駅から南海電車で、難波へ帰るのと反対方向に乗り、1年ぶりに訪れてみました。

マスターの大谷氏は私と同い年で、かつては大阪ミナミの「三ツ寺会館」の地下で「洋酒壽屋」という小さいバーを経営されていました。

難波でイソ弁(勤務弁護士)をやっていたころの私は、この店が当時の法律事務所から近かったこともあり、週に2、3回は通っていました。いかにもミナミで飲んでる人ふうの常連さんが夜な夜な通ってきていました。

その後、ご自身の地元で、自分の理想により近づけた店をやりたいということで、平成16年10月にこの店を開店。偶然ながら、私が弁護士として独立して事務所を開いたのと1週間違いのオープンでした。

 

そんな私ごとの思い出話はともかく、今やこの「ウイスキーキャット」も堺市のバーの重鎮的存在となったようです。重厚な内装ですが大谷氏以下、気のいいスタッフばかりで、中百舌鳥の地元の人たちに愛されています。

ウイスキーキャットとは、スコットランドの蒸留所で飼われていて、ウイスキーの樽をかじるネズミを捕まえる猫のことで...という解説はもはや不要かと思いますが、大谷氏のこだわりは、店名を単に「ウイスキーキャット」と名乗っているところだと思います。「バー ウイスキーキャット」ではありません。

この店は、洋酒やカクテルを楽しむバーでもあり、ビールやフードを楽しむパブでもあり、たまに行なわれるライブなどのイベントを楽しむスペースでもある、そういう思いがそこに込められているのだと思います。

生まれも育ちも大阪の私は基本的に「いらち」(せっかち)であり、バーに行ったらすぐに杯を空けてしまうし、空けたらすぐ次の一杯がほしいと思ってしまうほうなのですが、たまには、「おもむろに」時を過ごしてみたいときもあります。

BAR川名」は法善寺横町の路地の、目立たない鉄の階段を上っていき、秘密基地みたいな鉄の扉を開けたところにあります。鉄の扉をあけるとまだ階段が数段あって、上り詰めたところで店長の友原氏と目が合います。


カウンターの隅っこに、どっしりとしたターンテーブルが置かれていて、そこでいつもジャズのLPレコードがかけられています。

一杯目にハイボールなどを飲みながらターンテーブルがくるくる回るのを眺めつつ、レコードの針が最後まで進むと、友原氏がターンテーブルの前に現れて、レコード盤をくるっと裏返してまた針を置く、A面B面が終わると次のレコードをジャケットから出して、また針を置く、この「間」と所作が何とも、おもむろな良い感じなのです。

2杯目にマティーニなどのショートカクテルを頼みつつ、こちらもポケットからシガーとマッチを出して、おもむろに火をつけてみたくなります。


内装ひとつとってみても、カッコいいバーなのですが、店側も客側もカッコつけてるわけではない、大阪ミナミ流の「粋」を感じさせる店です。

オーナーの川名氏は、法善寺横町で毎年8月に行なわれる一大イベント「法善寺ジャズストリート」(http://www.houzenji.com/)の発起人でもあられます。

先日、半年ぶりくらいにこの店に行きました。

今は年に1、2回しか行かないですが、以前私が、本業の傍ら京都で司法試験予備校の講師をしていたころは、毎週1、2回は行ってました。

 

サンボアといえば、大正時代の神戸を発祥とし、現在(これを書いているのは平成23年5月)、大阪に7店、京都に3店、東京に3店を数える名門です。故・山口瞳の「行きつけの店」(新潮文庫)には、「サンボアは、諸説あるけれど、日本最古の酒場だと言ってもいい」とあります。

最近はやりのハイボールで「サンボアスタイル」というのが全国区になりつつあって、これは、冷やしたサントリーの角瓶のダブル(60ml)に、氷なしでソーダを注ぎ、レモンピールで香りをつけるというものです。

もっとも、サンボアなら必ずこのスタイルという決まりがあるわけでなく、京都の3店ではいわゆるサンボアスタイルのハイボールは出てきません。ここ木屋町サンボアでは、ウイスキーはスーパーニッカ、氷入り、レモンピールなし、というのが定番です。


そのスーパーニッカも、当方が酒好きであり、大阪への帰りを急ぐため素早く酔い心地になりたいのを分かってもらっていて、マスターの中川氏が私に出してくれるハイボールは、優にダブル以上は入っていたように思います。

いつだったか、マティーニをオーダーしたとき、ミキシンググラスにゴードンのジンがドボドボッと音を立てて入り、それを目の前で見ていた客の御婦人が「えらくたくさん入ったわね」と驚きました。マスターは平然と「いやあ彼は好っきやからね」と言いつつマティーニを作りました。カクテルグラスに入りきらないので、いつも、ちょっと飲んだらまたミキシンググラスから足してくれました。

あるとき「ジンはどれくらい入ってるんですか」と尋ねたところ、マスターは「うーん100(ml)くらいかなあ」と答えました。ダブルどころか、トリプルを超えています。

私は全国すべてのサンボアに行きましたが、ここ木屋町サンボアの融通無碍さが大好きです。この店の濃い味のハイボールやマティーニを思い出すたび、また京都に行きたいなと思ってしまうのです。

 私が通い始めたころ、このお店はお初天神通りの路地を入ったところにありました。

大阪でも有数の老舗の名店である、という情報くらいは仕入れて行ったので、最初のうちはずいぶん緊張しながらドアを開けたのですが、するといつも先代のマスター(現マスター天野氏の父)が、これまた有名な大きい声で「いらっしゃいませえぇっ!」「どうぞ、奥へ!」と出迎えてくれました。それで私も「こんな若造でも何だか歓迎してもらえてるみたいだな」と安心した記憶があります。

私が、たいていのバーに臆せず一人で入っていけるようになったのは、ここの先代に、客として大切に扱っていただいたことが大きいと思います。

先代が亡くなった後、店は北新地の南西部、堂島サンボアの隣に移転となり、現マスターが今も「いらっしゃいませ!」「どうぞ!」と客を迎えています。

 

さて、私は個人的に、ここの「付き出し」が大好きです。多くの酒飲みと同じく、私も飲むときには大した食べ物は要らないほうなので、あまり手の込んだものを出されると手に余るのですが、ここは別格です。

生ハムやローストビーフ、ポテトサラダなどが、小鉢に少量ずつ上品に盛られて出てきます。私はいつもこれを「おかわり」したいと思うのですが、恥ずかしくてまだやったことはありません。冗談抜きで、ここの付き出しだけは、どんぶりに10人前くらい入れて出してもらっても良いと思っています。

近年、立ち飲み居酒屋やスタンディングバーが増えている気がします。しかし、単に流行りとかカッコつけだけでスタンディング形式を取ったとしか思えないような店もままあります。立って飲むお店には、そこで立って飲む必然性がなければならない、というのが私の持論です。

バーで言えば、立って飲もうというときは手早く最初の1杯にありつきたい心境であることが多いので、酒がすばやく出てくることが必須の条件です。腰を据えてじっくり飲むというよりは、気楽に飲める雰囲気であってほしい。2、3杯とおかわりする場合でも長居するわけではないから、そこは店主やスタッフがきちんと目を配っていて、すばやく次の一杯を注いでほしい。

それら立ち飲み客特有の我がままを叶えてくれる店であって初めて、その店で立って飲む必然性が生まれてくると思います。


前置きが長くなりましたが、北新地のここ「アルルカン」は、それらをすべて叶えてくれます。マスターの佐藤氏は北新地のサンボアで修業をしておられたこともあって、スタンディングの客の扱いにも慣れておられるのでしょう。

とはいえ、じっくり飲みたい人にはテーブル席もあるし、葉巻なども置いてある。スタンディングが基本のカウンターでも、座りたい人には椅子が出てくるというのも、この店流のこだわりのなさで良いと思います。

ホームページ http://www.bar-arlequin.com/

Bar Whiskey」の本店は西道頓堀にありますが、東心斎橋のこちらは、本店の大マスターから店を任された坂尻氏が長らくお店を守っておられます。

レイモンド・チャンドラーの「ロング・グッドバイ」(邦題「長いお別れ」)にもそんなくだりがあったと思いますが、私は早い時間のバーの澄んだ空気が好きです。そしてここは午後4時という、バーとしてはかなり早い時間のオープンです。

もちろん普段はそんな早い時間には行けませんが、「この時間にここが開いてて良かった」と心底思ったことがこれまでの人生で二度あります。

一つは私が難波で雇われ弁護士(いわゆるイソ弁)をしていたとき、悩み続けた案件があって、それがある日の裁判で、ついに解決の見通しが立った。一緒に事件にあたっていた後輩弁護士と、裁判所からこの店に直行して、祝杯とばかりに飲み交わしました。

もう一つは今の妻と結婚する前、先方の父親にあいさつに行った日、結婚の承諾を得たあと、妻と二人で乾杯しにいきました。

いずれも、開店直後の、まだ明るい時間でした。

そんな私の人生のヤマ場(大げさか)を見守ってくれていたマスターの坂尻さん、落ち着いた物腰ですが、年齢的には私と同い年です。昭和46年生まれの、今ふうに言えばアラフォーです(ついでに、コールバーの室田氏、中百舌鳥の「ウイスキーキャット」の大谷氏も同い年です)。

同世代のマスターがどのように歳をとっていかれるか、そして自分も歳相応に落ち着いた大人になれているか、ここに来るたび自問しています。

東心斎橋・八幡筋のバー。古いバーが好きな方なら、「南サンボア」のあるビルといえば場所はお分かりかと。

つては堺筋に近い「仏蘭西館」に店がありましたが、心斎橋の中心部へ移ってこられて、もう何年も経ちます。ミナミの新進気鋭のバーテンダーであったマスターの室田氏も、いまやバーテンダー協会・大阪中央支部の中堅どころとなっておられるようです。

南堀江にある私の法律事務所から、御堂筋を隔てて徒歩5分程度の場所にあるので、仕事が早めに切りあがったときにはよく飲みに行きます。ちなみに、うちの事務所の終業時間である午後6時が、この店のオープンの時間でもあります。


バーに何を求めるかは人それぞれなのでしょうけど、私は、一人何かを考えながら、または何も考えずに、静かに酒を傾ける時間が欲しいのです。

マスターの室田氏は大柄なので存在感はあるものの、決して出過ぎないので、仕事を終えて家に帰る前にここで静かに2、3杯やるのが、たいへん心地よいのです。

そして、何か考え事を持って飲みに行ったときも、帰りの扉を開けるときには、いつも頭の中が軽くなった気がしています。

当ブログ管理人の山内です。

10年ちかく前に立ち上げた私のホームページで、
好きなバー、好きなお酒のことについて書いたりしていましたが
本業の多忙や、プライベートでは結婚や出産もあってバーから足が遠のいていました。

今般、ブログ形式でバー紹介のコーナーをこっそり再開させることとしました。
どこまで充実させていけるかはまだ心もとないですが、
折に触れて書いていきたいと思いますので、
本業に関するブログ(http://www.yama-nori.com/blog/)とあわせて、
たまにお読みいただければ幸いです。

今後、随時更新予定ですが、いましばらくブログのテスト中ですので、
うまくアップロードができずに不手際もあるかと存じます。
そこはご了承ください。

ということで、次回は私の好きな大阪ミナミのバーを紹介します。

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