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■ その他のコラム6【『本当の自分』を探している方へ】
1.「本当の自分」は発見できるか
2.他人は「本当のあなた」を知っているか
3.ま と め


『本当の自分』を探している方へ
「私、あなたが弁護士だからってあなたのことが好きなんじゃないのよ」
と、かつて当時の彼女に言われたことがある。

「じゃ、僕のどこが好きなの? 顔?」

「違うわよ」

「え、じゃあ、僕のカラダ・・?」

「違うって。私は、『本当のあなた』つまり『あなたそのもの』が好きなの」
と、まあ、一部脚色してますけど、そんな会話がありました。

 皆さん、「本当の自分」とは何か、なんて考えたことはありますか?


1.「本当の自分」は発見できるか

 新聞広告なんかで、よく「本当の自分探し」とか、「自分がやりたいことは何か」「自分の天職とは」といったことをテーマにしたような書物や映画を見かける。それだけ多くの人が興味を持っているテーマなのかも知れない。

 こういった類の書物が好きな人の多くは、おそらく、今現在つまらない毎日を送っており、仕事も好きなわけではないが、本当の自分はこんなものではなくて、どこかにもっと別の自分があるはずだ、そんな自分を発見したい、といったことを考えているんだろう。
でも、今の自分と全く異なる「本当の自分」なるものが存在するのだろうか。存在するとして、それは、本で読んだり、人から指摘されたりすることによって、判明しうるものなんだろうか。
 僕自身は、今こうして毎日を生きている自分と別個に、どこかに「本当の自分」なんてものが存在するなどとは思わない。

 もちろん、僕も、大学時代、そして大学卒業後しばらくは、自分のやりたいことや、自分の人生について悩んだ。
 それでも、自分が何をしたいのかなどということは、誰かから教えてもらえる類のものではないと思っていたので、色々と勉強して資格試験を受けてみたり、いろんな実務経験を積んでみたりして、そうしていくうちに弁護士の仕事をしたいと思うようになり、今の仕事にいきついた。
 この仕事が天職かと問われるとそれはわからなくて、今でもたまに自分はモデルのほうが向いているのではないかと思ったりすることもあるが、とりあえず、今はこの仕事で生きていこうと思っている。

 たいがいの人も、こういうものではないか。自分のあり方や、自分のしたいことは、ある日突然、人から言われて判明するわけではなく、いろんなことをやってみて、あちこちで頭をぶつけて試行錯誤しながら、そのうちに何らかの生き方みたいなものに行き着いて、それが最良かどうかはわからないけど、とりあえずそれで生きてみる、といった人生を歩んでいくものではないか。
 「本当の自分」というものが仮にあるとすれば、それは、今の自分とは別に存在しているものではなくて、今の自分が積み重なってできていくものなのではないか。発見されるものでなくて、自ら作っていくものなのではないか。
2.他人は「本当のあなた」を知っているか

 他人のいう、「本当のあなた」という言葉も要注意だと思う。
 冒頭に触れた元彼女は、上記の話に続け、要旨こうも言った。
 「あなたが弁護士であることはどうでもよい。そんなことよりも、私は、本当のあなたが持つ優しさが好きなのだ」
 こういった言葉は、一見、響きはよい。たしかに、「私はあなたを肩書きで選んだ」というような人とは付き合いたくはない。
 しかし、響きがよい言葉であるだけに、注意を要するのであって、他人のそのような言葉に踊らされて、それこそ自分を見失うことのないようにしないといけない。

 まず、人には色んな属性がある。肉体的なもの(顔かたちとか背の高さとか)、性格的なもの(優しさとか)、社会的なもの(職業、役職その他社会的地位)、経済的なもの(収入の寡多)等々。それら多くの属性が混じりあって、その人の人格を作っていると思う。

 僕自身、弁護士というのは単なる職業上の肩書きに過ぎないが、その肩書きを得るために、一般の人よりいくらかはがんばって法律を勉強してきたし、その過程を経たことが、今の自分のものの考え方、さらには性格・人格にも多少の影響を与えていると思う。
 また、例えば、顔やスタイルのよい女性は、生まれつきもあるのだろうが、キレイな顔とスタイルを保つために、それなりの努力や節制をしているはずで、そのことがその女性の人徳にもなっていると思う。

 このように、属性というものはその人の人格を形成している。これらすべての属性を切り離してしまえば、その人はその人でなくなるだろう。このへん、哲学的にはどんな議論になってるのかは知らないが、社会生活のレベルでいえば、様々な属性を一切取り払った抽象的な「その人自身」なんてものは想定しえない(または、想定する意味がない)と思う。

 要するに、元彼女が上記の言葉で言わんとしていたのはこういうことなのだ。
「私はあなたが弁護士としてデートする暇もないほど忙しくしている部分は好きではない、仕事よりも私を優先してくれるようなあなたが好きだ、それが本当のあなたであり、あなたはそうあるべきだ」と。
 つまり、僕の属性のうち、彼女にとって都合のいい部分を取り出して、それを「本当のあなた」だと規定して、そうあることを押し付けようとしているにすぎないのだ。
 かように、他人がいうところの「本当のあなた」という言葉には注意を要する。それはたいていの場合、「その人にとって都合のいいあなた」であるにすぎない。
3.まとめ

 かくて、本当の自分は、本にも書いてないし、探してもみつからないし、他人に指摘してもらえるわけでもない。
 まずとにかく、今すぐに動いてみよう、興味のあることをやってみよう、興味のあることがなければ興味を持てそうなことをやってみよう。向いていることなら長続きするし、続かなければ向いてなかったと思ってまた違うことをやってみればいい。そして、周囲の人々が言う「本当のあなた」などという無責任な言葉に踊らされないようにしよう。
 そうしていくうちに、自分自身が形作られていくものだと思う。


 この稿、説教くさくなりました。もちろん僕自身、今はまだ自分を形成する過程にいるから、偉そうなことを言う立場にないのは承知しております。今後も、弁護士とモデルとどっちが向いてるか迷いながら日々努力していきたいと思います。
 それから元彼女をネタにしてしまいましたがその方にうらみはありません。もし読んでたらメールでもください(未練あるんかい)。
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