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■ 仕事のコラム8【独立の記 その四 新しき日】
1.お披露目の日
2.南国土佐へ
3.愛すべき日常
4.新しき日
5.書いてみて思うこと


1.お披露目の日

 平成16年11月5日(金)、当事務所のお披露目会が行われました。
 我ら弁護士は、独立すると、事務所披露と称してパーティのようなものを開催することが多いのです。日を決めて事務所を空けておき、来てくれた人には軽食などで接待する。あわよくば事務所を宣伝して仕事につなげ、さらに同業者からは祝儀もいただく、という下心も持ってやってます。

 この日は昼から夜にかけて、同業者を中心に、隣接業種(いわゆる「士業」の方)、仕事上の知人、学生時代の友人、セミナーの受講生など、いろんな方が来てくれました。たまにいくバーのバーテンダーさん、それから北新地のおねえさんなんかも、夜の営業前に来てくれました。中には、営業時間になっているのに事務所に留まって、一般の来訪者にカクテルを作ってくださるバーテンダー氏もおられました。
 秘書Nも、遅くまで手伝ってくれました。
 この日に来てくださった方は約60名、この日に来れないからとその前後に来てくれた方を含めると、70人近い人が、私の事務所を訪れてくれたことになります。
2.南国土佐へ

 開業直後の弁護士にとって一大イベントである事務所披露も無事終わりました。
そんな11月のある日、私は、1日だけ事務所の留守番を秘書Nに任せ、高知に向かいました。高知市へは、何度か仕事で行ったことがあるのですが、今回は、実は仕事に関係なく、遊びに行くのです。
 私は突然思い立ってふらりと小旅行をするのが好きで、今回も、仕事抜きでふらりと高知にいってみたいなあと思ったのです。
 弁護士はたまに、客には「出張」と言っておいてゴルフに行くなんてことをしたりします。私は一生ゴルフはやらないと思うし、ゴルフを理由に事務所を空けることはしませんので、その代わりに、こういった形で、出張と言いつつたまに小旅行をしたりすることについてはご了承いただきたく存じます(すごい理論構成)。
 もっとも、高知に行っても、別に何をするでもありません。飛行機で高知に飛び、昼過ぎに旅館について、夕方まで旅館でごろごろして、夜が近くなると街に出て行くという、それだけです。すなわち、普段の生活とほぼ同じです。
3.愛すべき日常

 そんなわけで高知へと来て、その夜は、数か月前の高知出張の際にも立ち寄ったことのある、高知市内のモツ焼き料理屋に行きました。この前に来たときと同じ賑わいの中、やはり前と同じモツ焼きを味わいました。
 ああ、こないだと同じ日常が、ここにあるなあと、うれしく思いました。
 そのあといきあたりばったりで2軒ほどバーで飲み、最後に、やはり以前の出張のとき来たことのあるバーに入りました。もちろんここでも、前と同じマスターが立っていて、前と同じ雰囲気を醸しだしていました。

「今朝の雨は、すごかったですね」とマスター。
「あ、僕、今日の昼に大阪から来たんで、朝の雨にはあたってないんです」
「そうですか。以前も一度来られましたね」
「ええ・・」
 マスターは必要以上に話をしません。客も、それぞれの思いで酒を飲んでいました。私もただ、前来たときと同じように心地よい時間が流れていることを静かに感じていました。
 そろそろお酒がまわりはじめた頭の中で、ふと、大阪ミナミのあの店は今夜も賑わってるのかな、などと思い出して、我ながらおかしくなりました。大阪を離れて高知まで来たのに、することは一緒、考えてることも一緒です。

 自分はきっと、どこへ行っても、いつになっても、こうして同じような毎日を過ごしていくのだろうな、と思いました。
 そこで自分に問うてみる。そんな繰り返しの毎日が、楽しいか? ・・答えは、
 ――然り、楽しい!
です。
 この世の中のどこであっても、愛すべき日常があり、人々がそれぞれの日々を生きている。自分もその中の一人として、自らの日常を生きていく。それでいい、それ以上に、何を思い悩む必要があろう。
4.新しき日

 翌朝の飛行機で、私は大阪へ戻りました。仕事で何度かこの航路に乗りましたが、私はいつも、窓際の席を取ります。窓から外を眺めるのは飛行機に慣れていない証拠、などとも言われますが、私はいつも、窓の下の景色を飽きることなく眺めてしまいます。
雲の下に見える四国の山々、瀬戸内海の海岸線、それを越えて、大阪から伊丹空港へ向かう街々が見えてきました。
この街で、またいつもの日常が待っているのだ。

この先、自分は弁護士として、いかほどかの活躍をするかもしれないし、しないかもしれない。しかしいずれにせよ、この眼下に広がる街々のとある一点で、私はこれから自分の名前を看板に掲げて、この街々、この社会と渡り合っていくのです。それを思うと、これからの日々は、きっと至極愉快なものであろうと思いました。

 正午ごろには事務所に着きました。
「お疲れ様でした。楽しかったですか?」と秘書N。彼女は、私が遊びで高知に行ったのを知っています。
「ああ、楽しかったよ。高知の街ではね・・」
と話しかけたところで、事務所の2台の電話が同時に鳴りました。
私と秘書Nはそれぞれの机に駆け戻りました。
「はい、湊町法律事務所です」
と秘書Nが受話器を取って言いました。
私は一呼吸おくれました。・・実は、自分で名づけておきながら、この事務所名を口にするのが未だに少し気恥ずかしいのです。
この事務所名が、将来、世間に広く親しまれて、自分も胸を張ってこの名前を名乗れる日がくるのかな、などと考えながら、私も受話器を取るのでした。
「はい、湊町法律事務所です!」

――かくて、当事務所は、本日も執務中です。
5.書いてみて思うこと

 とりあえず、ここ最近のことを、いくばくかの誇張と創作を交えて手記にしたてあげてみました。書いてみて思ったことは、人に読ませるほどの苦労はしてないなあということと、仕事についての手記なのに酒を飲んでるシーンばかり出てくるなあということです。
 正直なところ、このホームページと同じで、ノリと勢いだけで立ち上げてしまったような新事務所ではありますが、やってしまった以上は、これからもがんばっていきます。
 次回の手記では、当職の八面六臂の活躍を綴っていきたいと思います。請うご期待!
独立の記 了
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