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コラム

コ ラ ム
■ 仕事のコラム6【独立の記 その二 黎明】
1.新たなオファー
2.夢が形に
3.さらば上坂LO
4.緊張の中で
5.明日から所長


1.新たなオファー

 平成16年10月独立に向けて、同年3月という早い段階で人・場所の確保ができました。
 しばらくたって5月ころ、難波の新歌舞伎座横に最近進出してきた早稲田セミナーなんば校から、この秋から講座を受け持ってほしいとのオファーを受けました。京都校ではすでに4月から1年間の講座が始まっているので、なんば校でも講座を持つとなると、当然、かけもちすることになります。しかも秋には、独立開業が重なって、えらくいそがしくなりそうな気がする。
 ちょっと悩んだのですが、でもせっかくのオファーだし、なんば校なら通勤至便だし、引き受けることにしました(もちろん、講座を2つ持てばそのぶんギャラが上がって独立後の経費が助かるという現実的な理由もある)。
 で、以後、独立準備と併行して、10月の開講に向け、なんば校のスタッフの方と講義内容の打合せを重ねていくことになりました。
2.夢が形に

 そうこうしているうちに夏がきました。独立まであと3か月をきり、具体的な独立準備に入ることになります。
 7月には、堀江の家具屋で事務所用の机や本棚などを見にいき、発注しました。
8月には、電話線を引き込み、机と本棚も納入されました。

 同じころ、大阪弁護士会に、「事務所変更届」を提出。新事務所名は「湊町法律事務所」、移籍の日は平成16年10月、と届け出ました。
 大阪弁護士会の窓口の人、
「承りました。5000円です」
えっ金とるん? ・・まあたしかに、事務所の変更があると、「自由と正義」(弁護士になると日弁連から毎月送られてくるあまり面白くない雑誌)に載ったりして弁護士会としても諸々の手間があるので、手数料は仕方ないか。でも5000円て・・。

 事務所名の「湊町法律事務所」ですが、もちろん地名から取ってます。住居表示上は浪速区湊町ではなく元町なのですが、事務所のあるビルが、旧国鉄「湊町」駅(現JR難波駅、OCAT)の前ですので。ミナトマチのほうが、なんとなく響きもよさそうだし。
 個人名の「山内法律事務所」ももちろん考えましたが、全国に同名の事務所がたくさんありそうだし、「山内憲之法律事務所」とフルネームにするのも何となく恥ずかしかったので。
 8月には、新事務所に「湊町法律事務所 弁護士 山内憲之」のプレートがかかりました。いよいよ、新事務所の形ができあがってきた、という感じでした。
3.さらば上坂LO

 9月に入ると、上坂LOから、自分の書籍やファイルを新事務所に少しずつ運び込み、事務所機能を少しずつ移転させていきました。新事務所の案内状も刷り上りました。
 平成16年10月1日(金)をもって、私は上坂LOを退職しました。
退職したとはいっても、私が主任でやっていた事件はほとんど、引き続いて担当することになりましたので、きっと、頻繁にこの事務所に戻ってくることになりそうです。ですから、特に感慨といったほどのことはありませんでした。
 でも、自分がイソ弁としてここに入所してから4年もたったのかと思うと、早いものだなあと思いました。4年間、総じて楽しいイソ弁時代を過ごしたと思います。
4.緊張の中で

 この、退職〜独立のはざまにさしかかった9月末から10月初旬ころ、私は、体調をやや崩しがちでした。諸般の雑用による疲労と、やはり環境が変わることによる緊張もあったのでしょう。いつも快眠の私が、夜中の3時や4時に目覚めて、明日はこれやってあれやってと考え出して朝まで眠れなくなることもありました。
 風邪気味でのどがおかしくなったり、まぶたが腫れたり、新事務所の案内状を持っていった北新地のママに「先生最近ちょっとやせはった?」と言われたりしました。

 ああ、また来たな、と思いました。過去の司法試験の受験時代も、試験の直前期に限って、体調を崩していたことを思い出していました。人は、人生のここぞというときには緊張して体調を崩しがちになるのだと、二度の受験(一度落ちたから)を通じて感じていました。しかし同時に、それは緊張からくる一時的なものであって本当の病気ではないので、放っておいて普通に生活していれば、そのうち過ぎ去るものであるということも感じていました。
 かくて、鼻声になったり「目ばちこ」になったりしながら、新旧事務所を往復しての引越し作業に明け暮れていました。
5.明日から所長

 事務所オープンを明日に控えた10月5日、私はいつものように火曜夜の早稲田セミナーでの講義を終え、その帰りに、これまたいつものように火曜の帰り道に寄っている木屋町のバーに向かいました。
 「明日、いよいよオープンなんです。あの、よかったら、記念に一杯いかがですか」
私はふだん、バーなどで自分のほうからマスターに一杯おごることを滅多にしません。営業中に飲まない人もいるだろうし、もしかしたらその日は体調が悪くて飲まないようにしているかも知れない。それに、おごることによってこっちが「上」の立場に立ってしまうように思えて居心地悪くなってしまうのです。でもこの日は、自然に、一緒に一杯飲んでもらいたい気持ちになった。そんなわけで、スーパーニッカのハイボール(私)と水割り(マスター)で乾杯。
 「じゃあ、僕のほうからも記念に・・」
とマスターはタリスカー(ウイスキーの銘柄です)の20年ものをショットで出してくれました。
 結局、経済的にみると、それぞれ自分で1杯ずつ飲んでるのと違わない結果となるのですが(細かいことをいうと私のほうがいいお酒をおごってもらってるので得をしている)、
おごり、おごられるという行為が、いかにも、これからがんばれよ!がんばるぞ! というエールの交換、心意気の交換のように思えて、このときのお酒をとてもうまく感じさせてくれました。
 ――明日から、自分が所長か。
私はタリスカーの余韻を味わいながら、明日からの日々に思いをはせました。
つづく...
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