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コラム

コ ラ ム
■ 仕事のコラム4【訴訟を通じて見る世相】
1.訴訟は増加傾向(たぶん)――その要因は
2.客観的に状況把握できない人が多い
3.専門家がその職責を果たさない
4.判断すべき人が判断しない
5.結び


訴訟を通じて見る世相

 本業の仕事のコラムをあんまり書いてないや、と思って、この記事をアップしました。
 私が加入している、「元気プラザ」っていう集まりがありまして、これは元・八光信用金庫理事の中川政雄氏が主宰している若手経営者の勉強会みたいなサークルなんですが、その会合で私が講演したときの内容を要約したものです。
 中川氏から私に、様々な訴訟案件を素材に現在の世の中の動きを語ってほしい、と要請がありまして、そんな大げさな話をするほど弁護士のキャリア積んでないんだけどなあと思いながら、とりあえず、弁護士業やって2年半という短い期間で感じたことを好きなように話してきました。以下はそのときの講演の要約です。


1.訴訟は増加傾向(たぶん)――その要因は

 弁護士の数が今後増えると言われてまして、これから仕事にあぶれる弁護士も出てくるんじゃないかとも言われてますが、私はその心配はしてません。世に紛争のタネは尽きませんし、訴訟は増加傾向にあります。いや、きちんと統計とか調べたわけじゃないんですけど、そんな気がします。まあ増加傾向にあるという前提で話を進めさせていただくとして、なぜそうなのか、その要因として考えられるところを、私の思うままに述べてみたいと思います。
2.客観的に状況把握できない人が多い

 一つには、自分のことしか頭になくて、他人のことが頭にない人、客観的な状況の把握のできない人が増えているということです。
 私がやった事例でお話しします。

 依頼者は、中小企業A社の社長aさんです。aさんが言うには、ある大手企業B社から「これこれの製品を開発してほしい、開発・製造してくれた商品はうちが一手に買い入れて、全国に売りたい」と依頼を受けたと。それでAB両者で業務提携の契約をし、がんばって製品を開発したのに、買い入れてくれない。開発にかけた費用3000万円を請求したい、とのこと。 
 裁判では証拠が重要です。その業務提携の契約書はありますか、というと、aさんは、そんなのは作っていないとのこと。では、いつ、いかなる内容の合意をしたのか、その具体的事実を知りたいと聞くと、aさんからは曖昧な答えしか帰ってきません。
 B社の担当者とaさんは以前から付き合いがあったらしく、そのツテで従来AB両社間にいくつかの取引があったようです。それで、B社担当者が、aさんに、こういう商品が今後売れるんじゃないか、ゆくゆくは業務提携なんかもしようか、などと、何らかの形で「そそのかした」ことがあったのも事実であると思います。
 そこでaさんは、その話を自分の都合のいいように解釈し、大きな契約ができた、と早合点して舞い上がってしまったのでしょう。不景気だからいい話がなかったから、ちょっとしたことで大げさに反応してしまったということもあったでしょう。ちょうど、モテない男性が、ちょっと女性に優しくされただけで舞い上がって、このひと僕のこと好きなんだと思い込んでしまうのと同じ心理といえましょうか。

 しかし、会社経営者としては、そんな大きな開発費を注ぎ込む以上、契約条件についてきちんと詰めた上で明確な合意をし、書面を取り交わしておくべきだったのでしょう。客観的状況からすれば、大手企業がそんな重要な「業務提携」をする際に口約束だけで行うということなどおかしいと気づくべきなのです。
 自分のおかれた状況をきちんと客観的に把握できていなくて、相手の話を自分に都合のいい解釈をして舞い上がってしまい失敗するという例でした。ちなみにこの件は、aさんがどうしても訴訟を起こしてくれというので、なんとかがんばってみましたが、やはり敗訴しています。
3.専門家がその職責を果たさない

 訴訟が増加傾向にある2つめの要因として、これまで訴えられなかった人が訴えられる、ということが挙げられると思います。具体的には、専門家相手の訴訟、医療過誤や建築紛争などです。弁護士も依頼者のお金を着服したとかで訴えられてますしね。
 専門家訴訟が増えてきた理由の1つとしては、権利意識の高揚と、それとあいまって医師や弁護士のような専門家を聖職者扱いする考え方が弱まってきたということがまず挙げられるでしょうか。
 専門家訴訟については、専門家を訴える原告の側にも、被告として訴えられた専門家の側にもついたことがありますが、そこで感じたのは、専門家が専門家としての役割を果たしていない場合が多い、そしてそれが専門家訴訟が増える一番の理由であろうということです。

 たとえば、建築紛争では、建築した建物が建築基準法等の定める安全水準に達していないということで、建築業者が訴えられたりします。そこでは、建物の構造からして安全水準を満たしているかどうかという非常に技術的なことが争われるわけです。
 しかし訴えられた建築業者の方がよく言うのは、「原告(施主つまり建築を依頼したほう)がそういうふうに建ててくれと言ったからやった、それが仮に建築基準法違反だとしても、施主はそれを知った上で安く上がるようにしてくれと言ったのだから、悪いのは施主である」という反論です。
 たしかに、安くあげるために、安い部材を使ってくれと依頼があって、それでできた建物が安全性にややかけるというケースはけっこうあるのでしょう。しかし、建築業者としては、仮にそういう依頼があったとしても法令違反の建物を建ててはいけない、もし建てるのなら後々のトラブルは覚悟しないといけない、と思います。
 弁護士はいかに依頼者に頼まれても違法な手段を使って事件処理をしてはいけないし、もしそれをしたら資格を剥奪されることもありうるでしょう。それと同じく、専門家である以上、専門家としてすべきことをし、すべきでないことはしない、それをわきまえる必要があると思います。
4.判断すべき人が判断しない

 会社間での訴訟も多いですが、大きい会社が依頼者である場合に困るのは、意思決定が遅い、判断すべき立場にある人が判断しない、ということです。これが紛争を招き、解決を長引かせるもとになっています。

 以下、私の担当した事例です。
 企業間の契約上のトラブルで、当方の依頼者C社が、相手のD社に2億円の違約金を請求しました。訴訟は和解の方向でまとまることになり、相手のほうから半分の1億円の和解金でどうかとの提示がありました。相手の会社の資産状況を考えると、かなりいい条件であり、私はこれで話をまとめるべきだと思いました。
 それで、C社の担当者や、取締役らと打ち合わせしたのですが、その提示に対し不服そうでした。どうして半分の1億なのか、もっと出すよう相手と交渉してほしい、と。結局、最終的に判断するのは代表取締役(社長)だから、ここでは決断できない、ということで、その日の打合せでは結論が出ませんでした。C社の意向を次回裁判の日までに意思決定して伝えてほしいと言っておいたのですが、その当日になっても電話が来ない。
 で、会社に電話をかけると、社長は不在だという。電話にでた担当者に、和解条件をのむか蹴るか判断してもらわないといけないので社長に連絡をとってほしいと伝えました。するとしばらくしてその担当者から返事がきました。いわく、「社長がいうには、『和解条件については山内先生が当社の意向を踏まえた上で相手と調整し、妥当な内容をまとめてくれると理解している』とのことだそうです」と、何やらよくわからない回答。要するに、任せるからよきに計らえ、とのことでしょう。とんでもない、そんな話はしていない、決めるのは私じゃなくてあなた方です、と言って、社長にその日の裁判に同席してもらうようにしました。
 その日の裁判は社長と取締役2名に来てもらいましたが、裁判所に行ってもゴタゴタとまとまらず、結局、持ち帰って協議する、ということで、解決は延期となりました。最終的には、私ももう少し交渉でがんばって、1億1500万円の和解金で和解しました。

 私は何度かの打合せを通じて思いました。C社の人も、実はみな和解したいと思っていると。ただ誰も和解しようと言わないのは、それを言うと、その判断に責任を持たないといけないからだと。つまり、2億のうち半分の1億円で和解したら、もう半分の1億円を失うという判断をしたことの責任をもたないといけない、それを回避しようとしてるんだろうと思いました。仮に私が、社長の「よきにはからえ」との指示を受けて、その日のうちに独断で1億円で和解をまとめたとしても、おそらく社長や担当者は文句は言わなかっただろうと思います。ただ、もし後で他の取締役とか、株主とか、親会社から文句が出ることを嫌い、その場合は、「弁護士の先生が決めたことです」と言って責任回避するつもりだったのでしょう。
 このように、責任をもって判断すべき立場の人が、責任を負うことを恐れて判断しない、それによって会社の意思決定が遅延するということが、トラブルのもとになり、また起こったトラブルを解決するのを長引かせることになると思います。
5.結び

 てなことを偉そうに話してまいりました。
 そんなにフォーマルな会合でもないので、ホントはもうちょっと具体的で生々しい話もしたのですが、文章にしてホームページにアップするのがためらわれるところを取り除いたら、上記のような無難なものになってしまいました。
 弁護士って誰しも面白い話のネタは持ってると思うんですけどね、職務上、書けないんですね。文章として発表する際は、守秘義務の関係上、無難なものにしないといけない、そこに弁護士のホームページがどれもあまり面白くない要因があると思います。あれ話が違う方向に行ってるぞ。
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仕事のコラム3





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