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コラム

コ ラ ム
■ 仕事のコラム2【私の1週間】
〇月〇日 月曜日
〇月×日 火曜日
〇月△日 水曜日
〇月□日 木曜日
〇月?日 金曜日


私の1週間

 弁護士としての私の1週間です。守秘義務との関係で、個々の具体的な事件についてはあまり詳細にはお話できませんが、雰囲気だけでも感じ取ってもらえたら、と思います。


〇月〇日 月曜日

 また新たなる1週間の始まり。
 朝6時20分起床、朝食。メールチェックをして、7時。出勤まで約90分ある。この時間帯はだいたい、週2回の予備校での講義の予習をする。
朝8時30分になると出勤準備。ラジオ
「ありがとう浜村淳です」を聞きながら、スーツに着替え。9時に家を出て、9時半には事務所に着く。
 「先生おはようございます。電話とファックスです。」と秘書が連絡帳とファックス文書を持ってきてくれる。午前10時の依頼者との相談を終えると、午前11時からの依頼者がもう待っている。それを終えると正午すぎ。月曜はやはり慌しい。午後1時からはまた打合せなので、近くのうどん屋で手早く昼食を済ませる。午後からも、打合せが数件。
 今日の来訪予定がすべて終わると5時ころ。これから、今日の打合せに基づいて書面を書いたり、明日は証人尋問なのでその準備もしないと。6時すぎにはお腹が減ってくる。コンビニで弁当を買ってきて、もうひとがんばり。
 午後7時半、もうそろそろ切り上げないと。月曜夜は、梅田のテコンドー教室に通っている。カルチャースクールでやってる程度のものだから、ラクなもんかと思ってたが、なかなか本格的。今日もスパーリングでバシバシ蹴られて痛い。でも、今日もいい汗ながしたなあ。
〇月×日 火曜日

 昨日蹴られた脚が痛いけど、今日もがんばろう。今日は朝から
証人尋問
とある契約上のトラブルをめぐって、7600万円の請求をされたという民事事件。法廷に入ると、傍聴席に若い人がたくさんいる。見学の人だろうか。このところ、特に若い人の法廷傍聴が如実に増えている。今日の見学は大学の法学部生だろうか。始まる前にトイレに行って、髪型とネクタイの結び目をチェックして、再び法廷へ。
 尋問のほうは、相手の弁護士の尋問が思ったより大したことなくて、ホッと安心して、雑念が湧いてくる。傍聴してる若い人たち、こんなかったるい法廷で退屈してないかなあ、書記官(女性)も綺麗な人だなあ・・いやいや、尋問に集中しないと。自分が立って反対尋問。傍聴席に自分の顔がよく見えるように角度を調整。たまに書記官のほうも見ながら。・・本当は証人と裁判官の顔を見ないといけないんだけど。
 どってことない尋問だったけど、朝から夕方までかかったので、尋問を終えるとさすがにホッとする。大阪地裁裏の喫茶店
「イーゼル」(弁護士の溜まり場)でコーヒー飲んでさぼってから帰ると、午後5時すぎ。「先生今日は長時間の証人尋問お疲れさまでした。」と秘書がコーヒーと茶菓子を出してくれた。さっきコーヒー飲んできたんだけど・・とも言えずにもう一杯いただく。
 そうこうしてるうちに7時すぎ。今日はちょっと疲れたから、この程度で切り上げようかな。書類を片付けて、今日は一人で難波に繰り出す。
「かどや」(大阪市中央区難波中)でホルモン焼きとヤキトリを食べる。ここのヤキトリは日本一うまいと思う。肉でハラを満たしたら、今日は一人静かに飲もう。三ツ津会館バー「洋酒壽屋」にふらりと入った。「1杯目はロングドリンクにしようかな。ハーベイウォールバンカーを」。ハーベイウォールバンカーを飲んでいるとマスターが「いいシングルモルトが入ったんですよ。リダイグの20年です。」と言ってくれたのでボトルキープする。
〇月△日 水曜日

 朝10時から裁判所で弁論があるので、自宅から大阪地裁へ直行。弁論を終えて10時半ころ、タクシーに乗って難波の事務所まで帰る。タクシーのラジオでは
「ごめんやす馬場章夫です」のオープニングテーマが流れている。このテーマ曲、幼稚園に向かうバスの中でも聞いてたなあ。もう20何年も変わっていないんだなあ。ああそろそろ御堂筋のイチョウが色づいてきたなあ・・とかどうでもいい思念が頭をかけめぐる。
 午後は某区役所での法律相談。役所や郵便局や弁護士会での法律相談にちょくちょく行くが、相談内容はホントにいろいろです。「マンションの有利な買い方教えてください」「離婚したいのですが夫にどう切り出したらいいのでしょう」って、
それ法律の問題違いますやん、とかいうのから、医療過誤や暴力事件といったかなり深刻なものまでいろいろ。相談は予約制なのですが、いつも予約でいっぱい。世の中、いろんな問題が起きているんだなあ、そして弁護士へのアクセスは、まだまだ進んでいないんだなあ、と、法律相談に来るたび痛感します。
 水曜夜は、
早稲田セミナー京都校での講義。大阪での法律相談を午後4時すぎに終えたら、午後5時半の京阪特急に乗って京都へ。午後6時半に教室に入ると受講生が今日もたくさん。3時間の講義。
そういえば今日は、法律相談でしゃべり、講義でしゃべり、とノドを酷使している。講義を終えて、セミナー職員の方とちょっと打合せをして、早稲田セミナーを出るともう夜10時前後。京阪特急淀屋橋行きの終電までまだ約1時間ある。
「木屋町サンボア」スーパーニッカハイボールを一杯。講義を無事終えたあとの一杯はノドと胃に沁みる。2杯飲んで四条駅に走り、11時の京阪特急の終電に駆け込む。自宅へつくとだいたい12時すぎ。
〇月□日 木曜日

 今日は裁判所に行く用事も、来客の予定もない。たまった書類作成を片付けよう。でも予定の少ない日というのは何か楽しい。事務所に着いたら、とりあえずパソコンでフリーセルをして、気が乗ってきたらゆっくり仕事に取り掛かる。昼は千日前のほうに足をのばして、法善寺横町近くの
「天下一品」でラーメンを食べる。帰りに法善寺横丁に寄って、水かけ不動に水をかけながら、法善寺横町の復興を祈る。
 午後もゆっくり仕事できるな、と思ってたら、こういう日はたいてい、何か入ってくるもんなんですね。ボス(所長弁護士)が私の近くに来て、「山内君、手は空いてるかね、ちょっと行ってもらいたいんだが。」刑事事件の依頼だ。息子が傷害罪で逮捕された、と年老いた父親からの相談。某警察署で接見を終えて帰ると、またボスに「ちょっと来てくれんか」と呼ばれる。こんどは民事事件の相談。午後こんなに人に会うんだったら、昼のラーメンにあんなにニンニクいれなきゃよかった。匂ってないかなあ。
 なんだかんだで結局バタバタして、気づくと午後6時ころ。まずい、今日仕上げるつもりだった書面がいっぱい残ってるぞ。・・で結局、夜9時ころまで書面書きに追われる。そうこうしていると友人の税理士のM君から電話。「得意先まわりが今終わった。ミナミにいるのでこれから飲みにいかないか?」。で、9時すぎに落ち合って、二人で夕食兼ねて飲みに行く。「夜まで得意先まわりかあ。えらくがんばってるなあ。」弁護士のほかに、会計士、税理士、司法書士など、いろいろ知り合いがいるけど、同業者または隣接業種で年の近い友人と飲みに行くのは好きだ。情報交換だけでなく、周りのみんなの活躍ぶりを聞いて、自分もがんばらないと、と刺激を受けるから。
〇月?日 金曜日

 今日の午後は明渡しの立会い。南大阪のとあるテナント物件の賃貸借をめぐるトラブルがあって、僕は貸主の甲山さんから依頼を受けて、借主の乙川さんと交渉した。裁判にいたらずに、乙川さんは立退きに応じてくれて、今日の午後5時までに、建物を明渡すことになった。僕は今日の午後5時に現場に行って、きちんと明渡しができたかどうかを確認する。この件もこれで一件落着だ。依頼者の甲山さんは弁護報酬を即金で払うと言ってくれてたなあ。楽しみだ。これが終われば夜7時からはミヨちゃんとのデートだし。
 しかし現場に着くと、なにやら不穏な空気。すでに現場に来ていた甲山さんと乙川さんがモメている。テナント物件の建物には「乙川興産」の看板がかかったまま、建物内には乙川さんの机やパソコンが置かれたままで、明渡しはほとんど終わっていない。甲山さんがいうには、乙川さんが立退き料の上積みを求め、明渡しを渋っているらしい。
「乙川さん、この和解条項のとおりに、今日5時までに明け渡すといったじゃないですか。」と私が問いただしても知らん顔。
そうこうしてるうちに、ヤクザ風のガラの悪そうな男が4人ほどトラックで乗りつけてきて、見ている間に建物内に荷物を運びいれようとしている。立退き料目当ての占有屋か?
 貸主の甲山さんも結構気性の荒い人なので、ついにガマンしきれなくなったか、そのヤクザに割ってはいって、やめさせようとしている。
「ひっこんどれッ!」ヤクザAが甲山さんを突きとばす。甲山さんは倒れこんだ。なんてことをするんだ、僕は怒りが込み上げてきた。さらにヤクザAは倒れた甲山さんを踏みつけようと片足をあげた。甲山さんは60歳近い。そんなことされると大ケガをしてしまう、危ない!僕は甲山さんのもとに駆け寄りながら、手にした「訟廷日誌」(弁護士用の手帳)をヤクザAの顔めがけて投げつけた。
「なんじゃーお前はー!」
ヤクザAが凄む。僕はヤクザたちを見据えて言った。
「不正と暴力許さない、自由と正義が旗印、胸に輝く金バッジ、
 遠からん者は音に聞け、近くば寄って目にも見よ、
 大阪弁護士会所属 花のビジュアル系弁護士 山内 憲之 見ッ参ッ!」

甲山さんを踏みつけようとしていたヤクザAはあっけに取られていたが、すぐに気を取り直してこっちにかかってきた。俺を殴ろうとするのをすばやくかわし、カウンターでヤクザAのみぞおちにパンチを喰らわす。ヤクザAはもんどりうって倒れた。
「こいつ・・!」残るヤクザ3人は一瞬ひるんだが、俺を取り囲むと、ヤクザBがボクサー風の構えでかかってきた。俺は今週のテコンドー教室でならったばかりの
ティーフリギ(後ろ回し蹴り)を見舞ってやった。ヤクザBはふっ飛んだ。
「ちくしょう、貴様ァ、俺が相手だ!」次のヤクザCがかかってくる。
中国拳法鷹拳の構えだ。少しはできそうだ。ヤクザCは見る間に、鷹の如く2メートルほども跳躍し、空中回転すると、俺の右頬に、鷹爪の一撃の如きパンチを浴びせた。
「おのれ、俺の顔に・・今夜デートなのに・・!」俺は怒りに我を忘れそうになった。いや、冷静にならないと・・。俺は呼吸を整え、ヤクザCの動きを見据える。拳法には拳法だ。俺は
少林紅拳の構えをとった。ヤクザCが次の跳躍をしたとき、俺は左脚を軸に体を回転させ、右脚を振り上げた。
「双震脚 擺外蓮跨虎勢!」
俺の必殺技だ。ヤクザCの打撃が俺に届く寸前に、俺の右足がヤクザCの胸板をとらえていた。ヤクザCの体は建物外にぶっ飛び、「乙川興産」の看板を突き破って地面に打ち付けられた。
残るヤクザDはやや高齢で、親分格のようだ。この様子を見ておそれをなしたか、もと来たトラックに乗り込んで逃げようとした。
「まて! 仲間を連れていけ! それから、荷物も全部持ってけ!」
ヤクザABCもようやく息を吹き返して、ヤクザDと一緒にすごすご荷物をまとめてトラックで走り去った。乙川さんも、一緒にトラックに乗っていってしまった。
「だいじょうぶですか甲山さん。でもこれで明渡しは完了です。」
「ありがとうございました。助かりました。」
甲山さんは報酬をくれた。今夜はこれで飲みにいける・・おっと、モメてるうちにもうこんな時間か、ミヨちゃんとの約束の時間に間に合わないぞ。私は甲山さんのもとを去ると、タクシーを捕まえ、南大阪から難波まで高速を走ってもらった。待合せ場所の難波・新歌舞伎座前に着いたのは7時20分。20分の遅刻だ。
「ミヨちゃんごめんね。」
「もう、何してたのよ。・・・でも、その顔どうしたの?」
ヤクザCのパンチを受けた右頬が少し赤くなっている。
「ああ、テコンドーの練習で蹴られたのさ。まあそんなことはともかく、今夜は何が食べたい?」
今週もいろんな事件があった。いろんな人に会った。今日は意外なアクシデントで疲れた。今夜は痛飲したいなあ。
道頓堀のネオンは今日も変わらず輝いている。
「久しぶりに鰻谷にでも行ってみようか。」
僕はミヨちゃんと2人で、夜のミナミの宵闇の中を、御堂筋に沿って北上していく。

終わり(一部フィクションです。)

仕事のコラム1





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