相続相談1 相続関係の調査

法律相談シリーズ2回目は、相続問題です。


相談者 田中良翁(40代、自営業)

 

山内(相談者シートを見ながら)「初めまして。えーと、これは、田中ヨシオさんと読むのですか?」

田中「いえ、田中ラオウです」

山内「そうですか、失礼しました。さて今日のご相談は」

田中「相続のことなんです。父親が先月に亡くなったので、今後の財産わけについてお聞きしたいんです」

山内「そうですか。お父さんの相続関係についてお聞きしますが、あなたのお母さんや兄弟の構成はどうなっていますか」

田中「母はずいぶん前に亡くなっています。兄弟としては、兄と弟がいます」

山内「そうすると、相続人はあなたたち兄弟3人ということになりますね。遺言書はありましたか」

田中「いいえ」

山内「お父さんの遺産にはどんなものがありますか」

田中「東大阪市にある自宅と、地元の信用金庫に預金が何千万かあるはずです」

山内「ではその不動産と預金を分けることになりますね。あなたたち兄弟が3分の1ずつの法定相続分を持ちますが、3人で遺産分割協議をして分配方法を決めることもできます。ご兄弟と協議はされましたか」

田中「いや、それが、話し合いできる状況じゃなくて、まだ何も進んでいないんです」

山内「ほう、連絡は取れないんですか」

田中「兄は遠くにいて、長らく音信不通です」

山内「えーと、そのお兄さんは何と言うお名前ですか」

田中「田中カイオウです。海に翁と書きます」

山内「カイオウさんはどうして音信不通なんですか」

田中「20年前に、俺は強い男になるために海を渡るんだと言って、出ていってしまったんです」

山内「ほう、では今、どこにいるかわからないんですか」

田中「いえ、淡路島で民宿の手伝いをしているんですけどね」

山内「はあ…瀬戸内海を渡ったんですか」

田中「はい、『料理民宿 しゅらの国』という宿で働いているということだけはわかっています」

山内「それから、弟さんは何オウさんですか」

田中「いや、田中トキといいます。登るに輝くと書きます。東大阪で、私の隣の家に住んでいるので、連絡は取れるのですが、病気がちなもので、あまり話しあいの場には出てきたがらないんです」

山内「そうですか。だいたいの事情はわかりました」

田中「私、相続でどれだけ取れるんでしょうか」

山内「いや、遺産総額がいくらになるかまだ把握できていませんし、他の兄弟の方が遺産分割協議に応じてくれるかどうかで、今後の方向性も変わってくると思いますので、今日の段階ではいくらとも言えません」

田中「私には難しいことはわかりませんので、すべて先生を通じてお願いしたいと思っているのですが、今後私は何をすれば良いでしょう」

山内「では私のほうで、東大阪の不動産の権利関係や評価額を調べてみます。あとは、お父さんの預金額がどれくらいか知りたいのですが、預金通帳は誰が管理しているのですか」

田中「私です。兄が家を出てから、私が父と同居しておりましたので。通帳は自宅のタンスにあるはずです」

山内「では、不動産は私が調べますから、次回までにお父さんの通帳を揃えておいてください。あと、私のほうから、カイオウさんとトキさんに、遺産分割協議に応じてくれるよう、文書で要請してみます。1か月もあればおおよそのことは判明するでしょうから、そのころにまたお越しください」

田中「わかりました。よろしくお願いします」


続く 相続相談2