PC遠隔操作事件の急展開について

更新が1か月以上あいてしまいました。

最近、たまに書いても幼稚園民営化の話ばかりと、古くからの読者に揶揄されたこともあり、違うことを書きます(とはいえ、本日、大阪の市議会で民営化の賛否が決議されるようなので、後日また触れる予定です)。

 

パソコン遠隔操作事件が急な展開を見せています。今後、ASKA逮捕のニュースに代わる勢いでさかんに報道されるのではないかと思います。

他人のパソコンを遠隔操作してインターネットに脅迫を書き込んだとして、片山被告人が裁判を受けています。起訴された罪名は威力業務妨害で、「コミケで大量殺人を行なう」などの書込みによって、コミケ(私も詳しくないのですが「コミックマーケット」の略で合ってますか?)の業務を妨害したということです。

 

起訴後、弁護士が保釈の請求をしました。保釈とは、ここでも何度か書きましたが、捜査が終わって裁判を待つ身になった人(つまり被告人)は、一定の保証金(金額は事案の内容に応じ、裁判官と弁護士の交渉で決まる)を納めて、身柄を解放してもらう、という制度です。

東京地裁は保釈を却下しましたが、弁護士の抗告(異議申立て)を受けて、東京高裁は保釈を認めました。今年3月、片山被告人は1000万円の保釈金を納めて、出てきました。

その後、この事件の「真犯人」を名乗る人から報道機関や一部の弁護士にメールが届きましたが、実はこれが片山被告人のいわゆる「自作自演」であった疑いが出たのが昨日のことで、今日、片山被告人は弁護士に「自分が真犯人」だと認めたとこと。今後、保釈が取り消されて改めて身柄拘束されるようです。まさに急展開です。

 

法的なことに触れますと、刑事訴訟法の96条に、どういう場合に裁判所が保釈を取り消せるかが規定されています。被告人が逃亡するおそれのあるときや、証拠隠滅の疑いがあるときなどです。

片山被告人は、別に真犯人が存在するかのようなメールを出したという疑いで、ウソの証拠をでっちあげることも真実の発見を妨げるものであって隠滅の一種とされます。

 

また、保釈の取消しの際には、裁判所は保釈金の一部または全部を没取することができるので、片山被告人は1000万円を取り上げられることが予想されます。

なお、今朝みたテレビで、このことを解説するときに「没取」(ぼっしゅ)と言ってました。「没収」(ぼっしゅう)と言わないのは、没収とは、刑法上、有罪判決を受けた人から犯罪の関係物件(凶器など)を取り上げることを言うためです。被告人から保釈金を取り上げるのは場面が違うので、こっちを「没取」と言って区別しているのです(刑事訴訟法96条2項)。

警察や法律家でもない限りは、別に区別する必要はありませんが、テレビでボッシュ、ボッシュと言ってて気になられたら、そういうこととご理解ください。

さらにどうでも良い話を付け加えますと、ボッシュと口で言ってもボッシュウと紛らわしいので、警察関係者は「没取」をボッシュと言わず「ボットリ」と言っているそうです(田宮裕「刑事訴訟法」新版(有斐閣)p259)。

 

私は今、ネットニュースで見た程度のことしか知らないし、真相がどうであるかも知りませんので、事件についてあまり立ち入った考察はできません。また続報を踏まえて、近いうちに、思うところを書きたいと思います。