「コンプガチャ」 返金請求は認められるか 2

コンプガチャの利用者が、これまで払った利用料の返金を請求できるかというと、おそらく無理であろうと書きましたが、その続き。

 

たとえば、サラ金業者に対して過払い金の返還請求が認められるのは、利息制限法という法律の第1条に、所定の利率(貸金の額に応じ15~20%)を超える利息の定めは「無効とする」と明確に書かれているからです。

無効の契約に基づいて利息を払う義務などないから、その利率を越えて支払った利息は返してもらうことができると、最高裁も認めたわけです。

 

これに対して、景品表示法にはどのようなことが書かれてあるかというと、事業者(グリーなど)は、不当に顧客を誘引するような表示を「してはならない」などと書いてあるだけです(4条)。

それに違反して不当な表示等をしてしまったらどうなるかというと、内閣総理大臣がそのような行為をやめるように命ずることができる(6条)とか、事業者に対し懲役や罰金などの刑を科する(15条以下)などと規定されています。

しかし、不当な誘引に乗せられて商品を買ったり、コンプガチャを利用したりした場合、その契約(商品を買うという契約、利用料を払ってコンプガチャを利用するという契約)はどうなるかというと、何も書かれていません。「無効とする」という規定はない。

 

教科書的にいうと、こうした観点から、法律は2種類に分けることができます。

一つは、利息制限法のように、それに違反した契約は無効とされる規定。これを効力規定と言います。

もう一つは、景品表示法など、行政が各種の業者に対して、健全な経済活動を行なうよう取り締まることを目的とする規定。これを取締規定と言います。取締規定に違反すると、行政からその業者に対しておとがめがあるけど、契約自体は直ちに無効になるわけではないとされています。

 

取締規定の例をもう一つ挙げます。

先日、高速バスの運転手が居眠り運転して、多数の死傷者を出すという事件がありました。バス会社は、道路運送法という法律に違反し、日雇いで運転手を雇っていたという報道がありました。

このとき、事故を起こしたバスに乗っていて、ケガをした人や、亡くなってしまった方の遺族は、損害賠償ということで、バス会社に賠償金を請求できます。

では、事故のとき以前に、このバス会社のバスに乗って、幸い事故なくバス旅行を終えた人たちは、「バス代を返せ」と言えるか、というと、ちょっと違和感を覚えるのではないでしょうか。バス会社に法令違反があったとはいえ、旅行は無事終わり、バスで運んでもらうという約束も果たされているからです。

バス会社は今後、運送事業者としての免許を取り消されるでしょうけど、バス利用者との間での契約(バス代を払って目的地まで連れていってもらうという契約)は無効にならない、ということです。

 

ただし、取締法規への違反があまりに甚だしい場合は、契約の効力自体が否定されることもあるとされているのですが、その点は次回に続きます。