離婚相談3 請求すべき内容と請求方法

相談者 エリカ 相談3回目

 

エリカ「今日は夫と私の源泉徴収票を持ってきました」

山内「なるほど、ご主人の年収は200万円、エリカさんは…250万円。エリカさんのほうが多いんですね」

エリカ「この状況で離婚したら、いくらくらい取れるんでしょうか」

山内「まず慰謝料ですが、これは離婚原因を作ったほうが支払います。ご主人の不倫が離婚原因だと認められれば、だいたい200万円前後は払ってもらえることになるでしょう」

エリカ「他に何かあるんですか」

山内「財産分与ですね。これは結婚後、2人で築いてきた財産を分けるという趣旨です。結婚してから、お二人で貯めてきた預貯金はどれくらいありますか」

エリカ「私のお給料は生活費で消えるんですが、主人は300万円くらいは貯めていたと思います」

山内「すると単純に考えて150万円ですね」

エリカ「家はもらえないのですか?」

山内「たしかご主人の両親が買ってくれたってことでしたよね。その場合はあくまで、夫が親からもらったものであって、夫婦で築いた財産とはいえないので、分与の対象になりません」

エリカ「じゃあ、ハーレーのバイクはどうなりますか。あれは結婚後に夫が貯めた給料で買ったんです」

山内「それは分与の対象ですね。ご主人がバイクを取るなら、代わりに、バイクの現在の時価の半額相当を、お金で払ってもらうことになります」

エリカ「今後、どうやって請求していけばいいんですか」

山内「お聞きしている限り、協議離婚は難しそうですから、家庭裁判所へ離婚調停を申し立てることになるでしょう」

エリカ「そうですか。でも一つ、気になることが」

山内「何ですか」

エリカ「前回のご相談のあと、夫に離婚調停を考えていることを伝えたんです。そしたら夫が、そんなことをしたら友人のスペインの弁護士に依頼して、スペインの裁判所で慰謝料請求の裁判を起こすとか言い出したのですが」

山内「は? よくわかりませんが、ほっておけばよいでしょう」

エリカ「私、スペインで訴えられたらどうなるんでしょう」

山内「どうともなりません。スペインの裁判所で判決が出たところで、日本国内では何の効力もありませんから。安心して日本の家庭裁判所で手続きを進めてください」

エリカ「私も弁護士をつけたほうがいいでしょうか」

山内「離婚調停の手続きは難しくはないので、弁護士なしでやる人も多いです。申立ての書式は裁判所のホームページからダウンロードできますし、必要な費用は、裁判所にもよりますが数千円程度です。弁護士を依頼すると、30万円くらいは着手金として必要になりますから、よく検討なさってください」

エリカ「弁護士をつけたほうが有利になりますか」

山内「家庭裁判所では、中立の立場の調停委員がついて双方の話をよく聞いてくれるので、弁護士がついてなくても、一方的に不利な内容の離婚をさせられることは、まずないと思います」

エリカ「じゃあ、弁護士に依頼するメリットは何かあるんですか」

山内「安心感でしょうね。調停の場に同席できるのは弁護士だけですし、その上で、相手方の主張が正しいのかとか、妥協すべきか裁判に持ち込むべきかとか、状況に応じてアドバイスを受けることができるので。離婚という人生の重大局面で、その安心感があるというのは、大きなメリットだと思います」

エリカ「わかりました。山内先生は誠実そうなお人柄なので、正式に依頼することにします」

山内「はい、お受けします。調停を通じて、ご主人に対し、離婚と、慰謝料・財産分与の支払いを求めていくことにしましょう。他に何か、ご主人に求めたいことはありますか」

エリカ「別に…」

山内「そうですか、わかりました。ああ、ついでに申しますと、家庭裁判所で調停委員さんに向かって『別に』とか言わないほうがいいと思いますよ」

 

(続く) 離婚相談4