大阪簡裁の法廷にて、市川鯛蔵の民事裁判、第1回口頭弁論。
裁判官「原告の市川さんの訴状を陳述します。暴力を振るわれたことの損害賠償として、50万円を払え、ということですね」
山内「はい」
裁判官「被告の伊藤さんは来ていませんが、答弁書が出ていますので。殴ったことは認めますが、お金がないので話し合いの上で、分割で賠償金を支払いたいとのことです」
山内「はい」
裁判官「では、次回は話し合いを試みてみましょうか。次回期日は…」
その後、大阪簡裁の控室にて、市川鯛蔵・真於夫妻と。
市川「今日の手続きはあれで終わりなんですか?」
真於「私たち夫婦もいつ発言を求められるかと緊張して見てたのですけど、あっさりしたものですね」
山内「はい。民事裁判の第1回目はあんなものです。ですから傍聴に来ても面白くはないって言ったでしょ」
市川「被告の伊藤は出てこなかったですよね、こんなの認められるんですか?」
山内「民事裁判の第1回は、被告の都合を聞かずに日時が決められるので、第1回目は答弁書だけ出しておけば良いという扱いになっているんです」
市川「で、伊藤はなんて言ってるんですか」
山内「法廷で聞いてもらったとおりです。殴ったことは認めると。ただ、何十万も支払えるお金がないので、話し合って、分割払いにしてほしいということです」
市川「私としては、払うべきものはきっちり一括で払ってほしいので、話し合いなど応じたくはありません」
山内「まあ、そこは現実的に考えてください。裁判に勝っても、賠償金を支払う財力が相手にないなら、取立てはできないですよ」
市川「私が鶴橋のホルモン焼き屋で見かけたときは、高そうな肉を注文してましたけどねえ。賠償金を払う余裕もないとは思えないんですが」
山内「そこがまさに肝心なところなのですが、お金を持っているはずだというのであれば、どこの銀行に預金があるとか、どこの会社から給料をもらっているとか、そういったことをあなたが特定しない限り、取立てはできないんです」
市川「え、そういうのは、裁判所や弁護士さんが調べてくれるわけじゃないんですか」
山内「残念ながら、裁判所や弁護士にそんな能力や権限はありません」
真於「あのぉー、そしたら、せっかく裁判で勝ったのに、実際に被告から回収できるお金は、ゼーロー、ってこともあるんですか?」
山内「ええ、可能性としてはありますね。ですからその、ゼーロー、って何なんですか」
市川「いいから真於は黙ってなさい。わかりました。実際お金が取れるか取れないかわからない判決をもらうくらいだったら、少しずつでも返してもらったほうが賢い、ってことですね」
山内「そういうことです」
市川「わかりました。次回の裁判も出席しますので、よろしくお願いします」
山内「はい。相手の出方を見て、落としどころを考えていきましょう」
続く 暴力被害相談4