明石歩道橋事故 免訴判決に思うこと 1

明石の歩道橋事故で、警察署の副署長に「免訴」の判決が出ました(神戸地裁、20日)。とはいえこのニュース、すでに新聞テレビで充分、論じつくされた気もします。情報の即時性がないのは、一弁護士が片手間に書いているブログの限界としてご了承ください。

この事件は平成13年の花火大会で起きました。歩道橋に人が密集して11人が死亡したそうです。警察署や警備会社の担当者が数名、業務上過失致死罪で有罪になったのですが、トップである署長・副署長も罪を負うのかが問題となりました。

 

当ブログでも繰り返し述べていますが、ある組織のもとで何らかの事件・事故が起こった際に、その組織が賠償責任に問われるのは当然としても、組織のトップである個々人に刑事罰を食らわせるのは、よほど慎重にしないといけない、というのが私の考えです。

検察側も(手前味噌ですが)私と同じように考え、この副署長を不起訴としましたが、検察審査会は起訴すべきであると議決し、平成22年4月に起訴されました。

そして裁判所が出した結論は、有罪でも無罪でもない「免訴」で、「もう時効だから裁判しない」ということです。刑事訴訟法の337条に規定があり、時効にかかったり、法律が変わって刑罰が廃止されたりした際に出されるものです。

 

事故があったのが平成13年で、業務上過失致死罪の時効は当時の刑事訴訟法によれば5年なので、普通に考えると、平成22年に起訴した時点で時効になっている。

これを有罪に持ち込もうという検察側(検察官役の指定弁護士)の論理は、副署長も現場の担当者と「共犯」であった。そして、刑事訴訟法上、共犯が裁判にかかっている間は時効は進まない、だから副署長はまだ時効でない、というものです。

現場担当者の裁判は、平成14年から19年まで続いたので、この期間を除外すると、確かに時効の5年は過ぎていないことになります。

 

しかし、神戸地裁は、副署長に過失はないし、過失の共犯も成立しない、と言いました。

警察署の副署長クラスの人が、個々の現場での警備にまで関与しているわけではないし、担当者と共同作業していたわけでもないから、刑事責任までは問えない、ということです。

警察としての組織的責任、道義的責任の問題はさておいて、副署長個人の刑事責任の有無については、極めて真っ当な判断であったと、個人的には考えています。

次回もう少しだけ続く予定。