「一票の格差」の何が問題か

3週間ぶりくらいの更新なのですが、毎度時期おくれの話題ながら、「一票の格差」とか「投票価値の平等」と言われる問題について書きます。昨年12月に行なわれた衆議院選挙が違憲であると、あちこちの裁判所で判決が出ていますので、その意味について。

とはいえこの問題、裁判所は長年、同じことを言っているので、熱心にこの裁判をやってる弁護士の方には申し訳ないですが、個人的にはあまり興味がありません。

 

とりあえず具体例でお話ししますと、私の住む選挙区は大阪1区です。大阪府大阪市の中央区・西区を中心に人口の多い選挙区で、有権者数は20万人くらいいるでしょう。有権者の過半数の投票を得ると1位になって当選するから、約10万票を取れば議員になれる。

逆の言い方をすれば、大阪1区の人は、10万人あたりに1人の衆議院議員を国会に送り出せることになります(実際には昨年、大阪1区で当選した人は8万票くらいでした。全員が投票に行くわけではないためです)。

これに対して、人口の少ない県、仮にA県の1区としますが、A県大字ド田舎字大田舎を中心に(もちろん架空の地名です。レツゴー三匹のネタです)、過疎地域の選挙区で、有権者は2万人しかいないとする。すると、A県1区では1万票取れると議員になれる、つまり1万人あたりに1人の衆議院議員を送り出せる。

このように、A県は1万人いれば国に一人の代表を送り込めるのに、大阪では10万人そろわないと送り込めない。このとき、A県の投票権の価値は、大阪に比べて10倍強いということになります。

 

実際には、10倍も差があるという状況はなくて、大きくても5倍ほどです。そして、これまでは都市部よりも農村部の投票価値が強いと言われていました。

農村から人口が流出していけば、選挙区(公職選挙法に定められている)を改正して、都市部の議員数を増やしていくべきだったのが、長年、政権与党だった自民党は農村部に支持基盤を持つことから、その改正を意図的にさぼったとも言われています。

民主党に政権が変わったあとの3年半も、この問題は結局手つかずでした。

 

考えてみれば、そもそも、過疎が進む農村部の投票価値が強いのが問題なのか、特に最近は震災を受けた東北部の投票価値はもっと強くてもいい(議員をもっと増やしてもいい)というふうに、一票の格差はもっと柔軟でも良いのではないか、という考えもありうるでしょう(正直なところ、私はそう思ってます。そのせいもあって、この問題はあまり興味ないのです)。

 

それでも、最高裁は、投票権の平等は憲法の要請である、頭数だけで1人1票というだけでなく、投票価値も平等である必要がある、と昔から言っています。

昨年の衆院選は、一票の格差は2倍前後でしたが、それでも、公職選挙法の改正を長年ほったらかしにした国会の怠慢を違憲とし、その状態で行われた選挙も違憲という判断が相次いでいます。

 

では、違憲の選挙なら無効なのか。あの選挙で議席を得た議員はその地位を失い、安倍総理の指名も無効で、この間に国会が決めたことも全部無効でやり直しとなるのか、というと、それではあまりに混乱が生じます。加えて選挙前の民主党政権が復活するのかと言われたら、なおさらまっぴらな方が大半でしょう。

だからこういうとき、裁判所は、「事情判決」と言って、違憲だけど諸々の事情にかんがみて、すでにやっちゃった選挙までは無効にしない、という判断をします。今回もそうです。

結局それで国会も安心して、選挙区改正をまたほったらかす、という状況が続いてきたのです。

 

今回も、裁判所はこれまでと同じことを言っています。いつか違うことを言ったら、そのときはまたこのブログで書きますが、それまでの間、このテーマについては以上で終わります。

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追伸!

本日(平成25年3月25日)午後1時ころに上記のような記事をアップしたら、とたんに裁判所が発奮したのか(もちろんそういうはずはなく偶然ですが)、広島高裁が選挙を「違憲であり、無効とする」との判決を出したそうです。これは初めての判断です。

なお私は午後4時すぎに配信されたネットニュースでこの判決を知りました。

あの選挙は無効になるのか、その具体的効果が注目されますが、ひとまず今後は、最高裁へ持ち越されて、改めて最高裁の判断を待つことになるのでしょう。

広島高裁の判決の概要が分かりましたら、続報を記載します。