袴田事件 再審決定に思ったこと 4(完)

無実の人が警察署で「私がやりました」とウソの自白をしてしまうのは、逮捕後の取調べの段階で弁護士がつかないことが多く、日本国憲法もそれを許容しているためである、という話をしました。

 

それを改善するために、弁護士がやりだしたのは「当番弁護士」という制度です。

これは、逮捕された直後の容疑者が弁護士との接見(面接)を求めた場合、警察署から弁護士会に連絡が入り、その日の「当番」として待機している弁護士が署内での接見に出かけるというものです。

その際、弁護士費用は要りません。当番で接見に行った弁護士には弁護士会から日当が出ますが、それは弁護士らが月々納めている弁護士会費から支出されます。

 

これが制度として定着したのは、きちんと調べていませんが、おそらくここ20年くらいではないかと思います。袴田事件が起こったのは昭和41年で、そのころは当番弁護士自体が存在しなかったはずです。

とはいえ、この制度の欠点は、最初の1回しか接見に来てもらうことができず、引き続いて弁護を依頼しようとしたら、私選の弁護士として依頼し、弁護費用を払う必要があることです。その費用がない場合は、起訴され被告人となって国選弁護人がつくのを待たなければならない。

だから、最初の接見で弁護士が、無実を訴える容疑者に対し「ウソの自白をするな、堂々と事実を主張しろ、警察の脅しに屈するな、裁判になればまた国選の弁護士が来てくれるぞ」と励ましたとしても、その後の勾留期間(短くても10~20日)を弁護士抜きで耐えるのは相当にキツイと思います。

 

そこで、当番弁護士だと限界があるということで、容疑者段階でも国選弁護人がつくようになりました。それが「被疑者国選弁護人制度」です。

これが導入されたのはごく最近でして、刑事訴訟法が平成16年に改正され、平成18年から実施されました。一部の微罪を除いて、現在では、逮捕された人には最初の段階から、国費で弁護士がつくことになっています。

これによって、取調べの段階でウソの自白をさせられるということはずいぶん減ると思います。

それでも、繰り返しますが、逮捕されたらすぐ弁護士がつく、という制度が確保されたのは、平成18年になってからのことであるのは、念頭においていただきたいと思います。

それまでには、警察官が容疑者を「型にハメる」ような取調べが行われていたとしても、その容疑者には頼るべき存在がいなかったという状況が、ザラにあったはずです。

加えて、近年のDNA鑑定等の科学的証拠の進化を踏まえて、今後も再審が認められるケースが増えていくのかもしれません。

 

結局、あまりまとまった話になりませんでしたが、これ以上に書き出すと専門的になりすぎる気がしますので(と言い訳して)、私の感想を終わります。