弁護士を最大限に活用する2つのルール 1

タイトルが安直なハウツー本みたいでお恥ずかしいですが、それはともかく。


先日、弁護士にとって質の低い事件とはどういうものか、などと、偉そうなことを書いてしまいました。じゃあ弁護士にとって質の高い事件とはどういうものだ、と感じた方もおられるかも知れませんが、それは、わずかな労力で多額の報酬をいただける事件です…と、これはもちろん冗談です。

これよりしばらくは、どんな事件であるかを問わず、弁護士とうまく相談する方法、つまり弁護士を利用する際に最大の成果を挙げる方法について、書かせていただきたいと思います。

 

かといって、特殊な秘訣があるわけではなく、当然のことばかりです。最初にそれを書いてしまいますが、要約すれば2点だけです。

1つめは、「いま、何が起こっているのかをまず伝えること」で、

2つめは、「自分から話をするのでなく、弁護士の問いに答えること」です。

 

1つめ、「いま、何が起こっているか伝える」ということについて。

具体的に言えば、「金を返せと訴えられ、訴状が届いた」、「妻が離婚したいと言い出した」、「息子が万引きで逮捕された」などです。

また、これとあわせて、可能であれば「それに対してどうしたい」ということも伝えればなお良いです。

金を返せと訴えられたのなら、事実無根のことだから徹底的に争ってほしいということなのか、借りたのは認めるから返済条件を話し合ってほしいということなのか。離婚したいと言われたのなら、そもそも離婚したくないのか、離婚はいいけど離婚条件を有利にしたいのか。これを最初に伝えることで、その後の相談がきわめてスムーズになります。

息子が逮捕されたなどという場合は、「どうしていいのかわからない」という人が多いでしょうから、それだけ伝えておけば、あとは適宜弁護士が聞き出してくれます。

 

これらは簡単なことのように思えますが、最初にこうしたことを明確に伝えてくれる相談者というのは、実はそう多くいません。それはやはり、相談者にとって恥ずかしいこと、不名誉なことであるからでしょう。その気持ちだけはわかります。

金を返せと訴えられたケースなら、弁護士としては、その人に送り付けられてきた訴状を見せてもらうのが、事案の理解のためには最も手っ取り早い。

しかし相談者にとっては「自分のことを『被告』とあげつらうような訴状など見せたくない」、「いきなりこんなものを見せてしまっては、この弁護士まで私を悪者と思ってしまうのではないか」という懸念があるのでしょう。

そのため、多くの相談者は「なぜこういうことになったのか」という、いきさつの説明から始めようとします。しかし、弁護士にとって、いま何が起こっているのかが理解できていない段階から、いきさつばかり話されても、なかなか理解しにくいのです。

こうして、相談者にとっても弁護士にとっても、時間と労力を無駄にすることになるのです。相談者は通常、時間単位で相談料を払うわけですから、お金の無駄にもなります。

 

と、そういう話をしばらく続けます。