公立女子大学に男性は入学できないのか

安楽死の話の続きを書こうと思っていたら、興味あるニュースに接したのでそちらを先に触れます。

ある男性が、公立福岡女子大学の入試を受けようと願書を出したら受理されなかった、ということを不服として「性差別」を理由に大学を訴えようとしているとのことです(15日、産経朝刊)。

 

国や公的機関は、性別によって国民を差別してはいけないと、憲法14条にも書かれています。私立の場合はその点自由なので、男子校・女子校はたくさんありますが、国公立でそれが許されるのかは、いちおう憲法上の問題となります。

私も学生のとき、憲法の講義で内野正幸教授(現・中央大教授)が「お茶の水女子大学は憲法違反ではないか」という問題提起をされていたのを覚えています。

もっとも、「税金を使って女子だけが入れる大学を作るのはけしからん」というだけで裁判を起こすことはできず、実際に入試を受けようとして拒否された、という不利益処分を受けて初めて提訴できるので、理論的にはともかく「そんな裁判、起こすヤツはおらんやろー」と学生当時は思っていました。

それが今回、実際に起こりそうな状況になりました。

 

いちおう理屈を付け加えると、国公立の女子大学の存在は、旧来あまり教育を受ける機会に恵まれなかった女性に対し、公費を使ってでも優先的に教育の機会を与える、ということで正当化されています。

立場の弱い人、差別されてきた人たちを優遇することで、真の平等を確保するということで、積極的差別是正措置、あちゃら語(浜村淳ふう)ではアファーマティブ・アクションと言います。

もっとも、それも行き過ぎると「逆差別」の問題が生じます。たとえば鶴橋駅あたりでヘイトスピーチしている連中は「在日韓国朝鮮人を優遇しすぎだ」などと訴えていますが、本題とそれるのでこれ以上は触れません。

 

福岡女子大を提訴しようという男性に話を戻しますが、新聞によると、この人は別に女子大生に囲まれてウハウハしたいと思って願書を出したわけではなく、栄養士になりたいのだそうで、福岡県の公立大学で栄養士の資格を取れるのはこの大学だけだったそうです。

代理人の弁護士は「女性を優遇する意味は失われている」とコメントしています。たしかに、今や男女を問わず、望めばたいていどこかの大学には入れるでしょう。

こんな時代に税金で運営する女子大学を残す意味はあるのか、時代の変遷により積極的差別是正措置がむしろ逆差別になっていないか、この事件はそういう問題を提起しています。

さらに付け加えると、栄養士の資格を取るための公立の女子大学、という存在自体、女性の仕事の固定化を招くものではないか、という問題も含むように思えます。

 

私個人は、古い考え方かも知れませんが、女性はある程度は庇護されて当然、と思うので、国公立の女子大学の存在は問題ないと捉えていますが、この問題について、男女同権論者はどう考えるのか、聞いてみたいところです。