外国の国旗を奪うと何罪になるか

中国で、日本の大使が乗った自動車が中国人の暴漢に襲撃され、日本国旗が奪われるという事件がありました。その犯人は、中国の役所にて「行政拘留5日」の処分を受けた、とのことです。

行政拘留というのは、行政(役所)の処分として身柄を拘束するということで、日本にはない制度です。公開法廷で裁判を開いて審理するのではなく、役所の内部で処理してしまったわけですから、中国人らの氏名や、具体的な行為、動機、なぜ5日という軽い処分で終わったかなど、すべてはウヤムヤのままです。

 

なお、日本国内において、大使の車から外国の国旗を奪うような行為をやるとどうなるかといいますと、刑法92条、外国国章損壊罪で、2年以下の懲役または20万円以下の罰金となります。

外国国章損壊罪は、外国に侮辱を加える目的で、外国の国旗を、損壊、除去、汚損することで成立します。損壊とは、破ったり燃やしたりすることで、除去とは、引きずり降ろしたり、今回の事件のように奪い去ることを言い、汚損とは文字どおり汚すことです。

外国が掲げているものに限られるので、たとえば西天満のアメリカ領事館でアメリカの国旗を引きずりおろすと外国国章損壊罪になりますが、大阪ミナミのバーボン・バーで酔っ払いが店内のアメリカ国旗を引きずりおろしても、この罪には該当しません。もっとも、引きずりおろすだけではなくて、破いてしまったりすると、別途、器物損壊罪が成立します。刑法261条で3年以下の懲役または30万円以下の罰金です。

 

なお、日本国内で日本の国旗を引きずり降ろしたりしても、外国の旗ではないので、外国国章損壊罪は当然、成立しません。もっとも、やぶいてしまうと上記と同様、器物損壊罪が成立します。

 

整理しますと、日本国内で外国が掲げている外国の国旗は、引きずりおろしたり、やぶいたりすると、外国国章損壊罪になります。

日本の国旗や、日本人が私的に掲げている外国の国旗は、引きずりおろすだけでは罪になりませんが、破ったりするところまでいくと、そこで初めて器物損壊罪が成立します。

このように、外国が掲げている旗に対しては、それを妨害する行為が広く処罰されているのが明らかであると思います。その理由については諸説ありますが、外国に対する敬意というものが根底にあることは間違いないでしょう。

 

今回の中国での事件の処理を見て明らかになりましたが、中国には、そういう条文が存在しないか、または存在したとしてもきちんと適用されないようです。

つまり、互いの敬意に基づいた付き合いが期待できない相手であるということであり、このことは今回の件を機会によく理解しておくべきであると思われます。