PTAへの加入は「義務」か 3(完)

前回の続き。たとえばある保護者、便宜上「Aさん」としますが、子供の小学校入学の時点で、PTAへの加入を拒否したらどうなるか。

次回に続くと勿体つけましたけど、結論はすでに出ています。結社の自由という大原則があり、PTAが任意団体である以上、AさんをPTAに加入させることはできない。

 

その結果どうなるかというと、いろいろなことが想像されます。

たとえば、どこの学校にも、PTAが主体となって開催する行事があると思います。地域参加の運動会や、バザー、夏祭りなど、PTA会員が準備・運営し、必要経費はPTA会費から出たりもするでしょう。

これらはPTAの行事である以上、会員でないAさん家族は参加できないことになります。そのことに法的問題は全くありません。小学校の義務は義務教育を教えることであり、PTA関係の行事に全生徒を参加させるような法的義務はないからです。

 

それから、たとえば子供同士や保護者間でトラブルがあったとか、子供が地域でちょっとした問題を起こしたということがあったとします。その場合にはPTAの役員が間を取り持ったり、町内会長など地域の協力を取り付けたりして、丸く収めにかかることもあるでしょう。

その場合でも、Aさん一家に関しては、そんな労は取らない、自分で解決しろ、と言うべきことになりそうです。

 

PTA会員でない人は、行事にも参加できない、何かのトラブルに巻き込まれても手助けしない、だってPTAにはそんな義務はないんだから、というのが法的な帰結ということになります。

しかし、そんなことは、小理屈の好きな弁護士なら平気で言えるかも知れませんが、普通の心ある保護者一般はとても言えないでしょう。Aさんはともかく、その子供がかわいそうだからです。

そうすると、周りのPTA会員の人たちは「まあAさんもお子さんと一緒にどうぞ」と行事に参加することを認めてあげることになる。結果、Aさん一家は、PTA会員が苦労して費用も出して開催する各種行事に「ただ乗り」することになるわけです。

Aさんなら「いや、うちはそんなただ乗りはしない」と言うかも知れません。それならAさんは自分の子供に対し、「うちはPTAの行事に参加してはいけないんだよ」ということを語って聞かせてやらないといけない。それはどう考えても子供に良い影響を及ぼすとは考えられない。

 

以上、私の考え方を整理しますと、保護者はPTAに加入する法的義務などない。しかし、教育現場においてはPTAの存在は子供の育成や諸々の問題解決のために不可欠であって、そこに加入するのは親としての当然の義務であると考えています。

PTAに限らず、人の世には、多数の人のちょっとずつの善意や協力の集まりによって、いろんなことがうまく回っているということが、多々あると思います。そこに法的観点を持ち込んで、それに参加する法的義務のあるなしを問題にすること自体がナンセンスであるというのが、私の結論です。