高嶋政伸の離婚裁判についての点描 1

高嶋政伸と美元の夫婦の離婚訴訟が決着しました。1審では高嶋政伸の離婚請求が認められ、その後、高嶋政伸が訴えを取り下げ、協議離婚が成立したようです。

 

訴えの取下げに関して少しだけ解説しますと、原告(本件では高嶋政伸)は、判決が確定するまでの間、訴えを取り下げることができます。敗訴した美元が高裁へ控訴するかしないかギリギリの時期でしたが、控訴できる間は地裁の判決は確定していないので、この時点での取下げはもちろん可能です。

ただし取下げには被告側(美元)の同意が必要です。取下げというのは、勝ち負けを決めないままに訴訟を終わらせるということですので、もし訴えられた側が、勝ち負けハッキリさせたいと考えていれば、取下げで終わらせることはできません。

今回の訴訟では、訴えを取り下げることに美元が同意し、その際、離婚条件について話し合いが行なわれて、お互い離婚届にサインして、協議離婚ということになったものと思われます。

 

芸能ニュースではこれまで派手に報道され、訴えの取下げという顛末を意外に感じた方もおられるかも知れませんが、弁護士としては、ありがちな話だなと思っています。

調停や裁判で離婚が決まった場合、離婚届に双方サインしなくても、裁判所の判断の結果として離婚が自動的に成立します。そして戸籍には「調停により離婚」「裁判により離婚」と記載されます。美元が実際にどう思ったかは知りませんが、それを嫌う人は多いようです。

私も過去の依頼者の案件で、離婚調停のあとで、互いに合意の上で協議離婚の形をとって終わらせたケースがいくつかあります。この場合は、戸籍には「協議離婚」と記載されます。

同じ話を、戦後の民法の第一人者であった故・我妻栄氏が、書いておられます。

要約すると、「離婚の話を裁判所に持ち出したとなれば、世間的には、何か因縁をつけたように見られ、再婚にも差し支える。協議離婚だといえば、穏やかな話し合いの結果だと認めてもらえる」と、多くの人が裁判を嫌うのはなぜか、という随筆の中で触れられています(作品社「日本の名随筆 裁判」)。

美元はこの裁判で有名になってしまったので、裁判で離婚を争った過去を消せないと思うのですが、やはり戸籍にそれが載るのはイヤ、と思ったのかも知れません。

 

もちろん、戸籍の記載だけでなく、今後高裁で延々と争っていくことの手間や時間を考え、また離婚条件についても双方の納得ずくで話し合える(裁判離婚となると離婚条件は裁判所が決める)ことを考えると、双方にとって、訴えの取下げにより協議離婚するメリットは大いにあったと思います。

一部報道では、訴えの取下げによって「裁判はなかったことになった」と報じられていましたが、両者にとっては、この裁判は納得ずくでの協議離婚に至る過程として、決して無駄ではなかったと思います。

 

さて、東京地裁がそもそも、高嶋政伸を勝訴させた原因はどこにあったのか、という点については、私なりに思うところもあるのですが、そのあたりは次回にでも書く予定です。