ある消費者金融との会話より

昨年11月以来、しばらくぶりの更新です。何度も言っていますが、さぼりがちですみません。
最近、複数の依頼者に「ブログ見てますよ」と言われたので、少しずつでも書いていこうと思っています。ちなみに、「見てますよ」と言ってくださる方の多くは、それなりに調べて書いているつもりの法律問題ネタではなく、「ハワイ旅行記」読みました!とおっしゃいます。
ですので今回も、多少雑感的に書きます。

消費者金融からお金を借りすぎて、これを整理したい、という依頼はよくありますが、なかには、借りてからずいぶん期間が経っているものもあります。
先日、返済期限が10年前に過ぎている借金を、今になって「返せ」という催促状が来たとの相談がありました。消費者金融からの借入れは、請求もされず返済もせず、5年を経過すると、商法上、時効で消滅します。
「借りておいて何も言われなかったからって時効で踏み倒すってどうなの?」と感じる向きもあるかも知れませんが、弁護士としては立場上、依頼者の代理人として、「消滅時効にかかっているから払わない」という対応を取ることになります。

そういう文書を、とある消費者金融に送ると、担当者が私に電話してきて「その方は、長年海外に行っていたから、時効は停止していますよ」と言ってきました。すべては書きませんが、借りたまま一切返しもせず国内や海外を逃げ回っていた、というような話を、延々まくしたててきました。
私はその話を一通り聞いたあと、「それで、海外に在住していると民事上の時効が停止するという法的根拠を教えていただけますか。恥ずかしながら、不勉強なものでして」と言うと、その担当者はとたんにアヤフヤになりました。

たまに勘違いしている人がいますが、海外にいると時効が停止するというのは、刑事裁判のほうの話です(刑事訴訟法255条)。そういうドラマや実際の事件があったりするから、混同されているかも知れませんが、お金の貸し借りという民事上のことは、海外に行っても時効が停止するわけではありません。
もちろん、その消費者金融の担当者は、そのことを重々承知していながら言っているはずですが、素人相手ならともかく、弁護士によくもそんなことをヌケヌケと言ったものです。CMなんかも流してて、それなりに名の通った消費者金融なのですが。
ここに限らず、消費者金融は、そういう知識を持たない人から、このやり方で時効にかかった債権の回収を図っているのだと思います。

生きていく上で正しい知識を持っておくことは大切だなと、この仕事をしているとよく思います。
そして、一般論として、よく分からない話をまくしたててくる人に対しては、議論に乗らずに聞き流した上で、最後にアホな振りして「すみませんがその根拠を教えてもらえますか」と言い放てばよいのだと思います。私もよくやってます。

 

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