民法772条と親子関係不存在について(大澤樹生の事件にからんで)

元・光GENJIの大沢樹生が、息子との間の父子関係が不存在であることの確認を求めた裁判で、東京家裁はその訴えを認めました(11月19日)。判決文をちゃんと見たわけではないのですが、テレビなどを見る限りでは、そのポイントは2つです。それらについて簡単に触れます。 

一つは、DNA鑑定の結果、両者は血縁上の父子である可能性は0%であるとされたこと。もう一つは、息子が生まれたのが、大澤と元妻・喜多嶋舞とが結婚してから200日目であったからです。

民法772条で、婚姻から200日を経過した後(つまり201日目から)に生まれた子は、夫婦が婚姻中に懐妊した子であり、その子は夫の子と推定される、という規定があり、この息子にはその既定が適用されない、ということです。 

一つめ、DNA鑑定の結果が0%であれば、親子関係を否定してしまってよいか。これは当ブログでも過去書きました。(こちら) 

もう一つ、今回のケースでは、息子は民法772条の規定する期間外に生まれたから父子関係が否定されたとの点。テレビなんかを見ていますと、「1日違うだけで結論が全く異なるのは子供がかわいそう」などというコメントもありましたが、果たしてそうか。 

婚姻から201目以後に生まれた子供は、民法772条により、夫婦の子(嫡出子)とされ、夫婦の戸籍に記載されます。最近多い、いわゆる「デキ婚」の場合は、妊娠してから入籍すると、婚姻から200日以内に子供が生まれることもありますが、この場合はというと、役所での運用上、同様に夫婦の子として戸籍に載ります。 

では、この2つのケースで、何か実際の違いが出てくるのか。その違いは、父親が、「この子は俺の子じゃない」と争おうとしたときに現れます。

前者の場合、父が「俺の子じゃない」と主張するためには、その出生を知ってから1年以内に「嫡出否認の訴え」という裁判を起こす必要があります(民法776条)。1年を過ぎると、もはや親子関係は否定できない建前です。法律が、この子はこの父親の子供だと推定している以上、それを否定することはずいぶん限定されるわけです。一方、後者の場合は、その限定はありません。いつでも「親子関係不存在の訴え」を起こすことができる。 

そう書くと、たしかに1日違いで結論に極端な差があるように見えます。しかし実際の家庭裁判所の審判例を見ますと、前者(772条の期間内に生まれた子)であっても、「自分の子でないという事情があとから判明した場合は、そこから1年以内であれば、嫡出否認の訴えを提起できる」という判断が見られています。 

ですから、今回の大澤の息子のケースでも、彼が201日目に生まれていた(そのため大澤の子との推定を受ける)としても、大澤が、DNA鑑定の結果として父子である確率が0%と知ったのが最近のことなので、そこから1年以内であれば嫡出否認の訴えを起こして、同様に親子関係を否定することはありえたと思います。

そういう意味で、1日違いで結論が正反対になる、という不都合は、実際には生じにくいと考えられますし、少なくとも私はそういった実例を知りません。

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