今年もお世話になりました。

はやいもので、平成23年も暮れようとしております。

当事務所は、本日28日をもって仕事納めとさせていただきます。

 

当ブログは、特に年末あたり、私(山内)の多忙等の理由により、なかなか時事問題に関する記事を書くことができず、以前から温めていた「法律相談シリーズ」でお茶をにごさせていただきました。時事ネタをご期待の方(もしおられるとしたら、ですが)には、更新頻度が鈍ってしまい、申し訳ありません。

 

今年もまだ3日と半日ありますので、当ブログにおいても、今年を振り返ってとか、新年の展望とか、その他諸々の雑感を書くつもりではあるのですが、もし年が明けるまで更新がなかったとしたら、家の掃除と、子供の遊び相手と、やり残した仕事とで忙殺されているとご理解願います。

 

なお、事務所の新年の業務は1月6日からです。

休みの期間中は、基本的に事務所へは連絡が取れない状態になっていますが、もしこの間に緊急のアポイントをご希望される方は、ブログのコメント欄に書いていただければ、私のほうで確認できますのでご利用ください。

 

もっとも、皆さまにおかれても、弁護士に緊急連絡を取らなければならないことのないよう、平穏な正月を迎えられることをお祈りしております。

暴力被害相談4(完) 和解による解決

大阪簡裁法廷にて。第2回弁論。

 

裁判官「では、原告・市川さんと、被告・伊藤さんの間に成立した、和解条項を確認します。被告は原告に賠償金25万円を支払うこととし、今月末から5回に渡り、月5万円を原告指定の口座に振り込むこととする。本件についてはこれをもって清算されたこととし…(後略)。原告も被告も、これでよろしいですか。被告の伊藤さんは、条項どおりにきちんと支払ってくださいね」

伊藤「はい、わかりました。ご迷惑をおかけしました」

 

簡裁ロビーにて、市川夫妻と。

 

市川「早めに和解でカタがついて良かったです。最後には伊藤も謝ってくれたし」

真於「伊藤さんって、私、もっと争ってくると思ってたんですけど」

山内「刑事事件で有罪になってますからね。勝ち目はないと分かっていたんでしょう。それに、略式裁判を受ける前に、警察や検察にこってりしぼられて、少しは反省もしたんじゃないですか?」

真於「あのぉー先生、賠償金も値切られましたし、それに5回の分割払いだなんて、反省してくれたのかどうか、ちょっとわからないんですけど」

山内「いや、それでも相場の範囲内でしょう。伊藤さんは弁護士もつけずに一人で裁判所に出てきたんですから、金銭的に余裕がないんでしょう。余裕のない人に過大な賠償金を求めても、払えないと言われれば、取り立てようもないんです。それでも、払えそうなギリギリの条件であれば、何とか算段をつけて払おうとしますから」

市川「うん、そんなもんだよ真於。多少の無理ならがんばれるけど、全く無理なことなら、開き直って、煮るなり焼くなりしてくれ、ってなるだろうからね」

山内「そうですね。それに、そう言われても、相手を煮たり焼いたりできないですからね」

市川「まあ、もとはと言えば、私が酔って不用意なことをしたのが原因ですから、請求額の半分でも相手が認めてくれたのであれば、充分だと思っています」

山内「鯛蔵さん、失礼ながら、今日はえらく理解がありますねえ」

市川「ええ、私も今回の一件で、自分の振舞いをいろいろ考えさせられました。あの事件の日に戻れるとしたら、自分に『行くのをやめなさい』と言ってやりたい気持ちです。過去には戻れないんで、これから自分自身を律していきたいと思います」

山内「ええ、そういう気持ちがあれば、きっと今後トラブルに巻き込まれることもないでしょう。真於さんも、鯛蔵さんを支えていってあげてください」

真於「はい、わかりました。ありがとうございます」

山内「では私はこれで…」

真於「あ、そうそう、あなた、あのこと、先生に報告しなくちゃ」

市川「あ、そうだ、先生、今度の舞台で、ついに大きな役をもらえることになったんですよ」

山内「それはおめでとうございます。やはり時代劇ですか?」

市川「ええ、詳しくは知らないんですが、『切腹』とかいう映画を大衆演劇でリメイクするらしいんです」

山内「ほお、『切腹』ですか。仲代達矢演じる主人公が、かつて身内を切腹に追いやった相手に敵討ちをして、最後に自身も切腹して果てるんです。私も観ましたが、なかなか壮絶な映画でしたよ。じゃ、市川さんは仲代達矢の主人公役ですか?」

市川「いえ、主人公の身内に切腹させる人の役だそうです」

山内「ああ、悪役ですか…。いや、それでも重要な役どころですよ。いずれにせよおめでとうございます。がんばってくださいね」

市川「ありがとうございます。お世話になりました」

 

暴力被害相談3 民事裁判

大阪簡裁の法廷にて、市川鯛蔵の民事裁判、第1回口頭弁論。

 

裁判官「原告の市川さんの訴状を陳述します。暴力を振るわれたことの損害賠償として、50万円を払え、ということですね」

山内「はい」

裁判官「被告の伊藤さんは来ていませんが、答弁書が出ていますので。殴ったことは認めますが、お金がないので話し合いの上で、分割で賠償金を支払いたいとのことです」

山内「はい」

裁判官「では、次回は話し合いを試みてみましょうか。次回期日は…」

 

その後、大阪簡裁の控室にて、市川鯛蔵・真於夫妻と。


市川「今日の手続きはあれで終わりなんですか?」

真於「私たち夫婦もいつ発言を求められるかと緊張して見てたのですけど、あっさりしたものですね」

山内「はい。民事裁判の第1回目はあんなものです。ですから傍聴に来ても面白くはないって言ったでしょ」

市川「被告の伊藤は出てこなかったですよね、こんなの認められるんですか?」

山内「民事裁判の第1回は、被告の都合を聞かずに日時が決められるので、第1回目は答弁書だけ出しておけば良いという扱いになっているんです」

市川「で、伊藤はなんて言ってるんですか」

山内「法廷で聞いてもらったとおりです。殴ったことは認めると。ただ、何十万も支払えるお金がないので、話し合って、分割払いにしてほしいということです」

市川「私としては、払うべきものはきっちり一括で払ってほしいので、話し合いなど応じたくはありません」

山内「まあ、そこは現実的に考えてください。裁判に勝っても、賠償金を支払う財力が相手にないなら、取立てはできないですよ」

市川「私が鶴橋のホルモン焼き屋で見かけたときは、高そうな肉を注文してましたけどねえ。賠償金を払う余裕もないとは思えないんですが」

山内「そこがまさに肝心なところなのですが、お金を持っているはずだというのであれば、どこの銀行に預金があるとか、どこの会社から給料をもらっているとか、そういったことをあなたが特定しない限り、取立てはできないんです」

市川「え、そういうのは、裁判所や弁護士さんが調べてくれるわけじゃないんですか」

山内「残念ながら、裁判所や弁護士にそんな能力や権限はありません」

真於「あのぉー、そしたら、せっかく裁判で勝ったのに、実際に被告から回収できるお金は、ゼーロー、ってこともあるんですか?」

山内「ええ、可能性としてはありますね。ですからその、ゼーロー、って何なんですか」

市川「いいから真於は黙ってなさい。わかりました。実際お金が取れるか取れないかわからない判決をもらうくらいだったら、少しずつでも返してもらったほうが賢い、ってことですね」

山内「そういうことです」

市川「わかりました。次回の裁判も出席しますので、よろしくお願いします」

山内「はい。相手の出方を見て、落としどころを考えていきましょう」


続く 暴力被害相談4