年の瀬に「お笑い」と「たこ焼き」を思う

当事務所の年内の業務は28日をもって終了させていただきました。


だから、ということでもないですが、今回は完全に雑談です。

大阪の人間は、誰もが「お笑い」と「たこ焼き」には一家言を有しています(たぶん)。

お笑いといえば、「M-1グランプリ」が本年で終了しました。出場した漫才師のなかで誰が面白いか、という議論は、大阪の人間に限らず、お笑い好きなら尽きない話題でしょう。

私も楽しんで見ていたほうですが、ただ、私個人の感想としては、お笑いというのは、あまり真剣にやられると、こっちが興ざめするように思います。演じる側の意気込みや熱意が伝わり過ぎると、見ているほうが緊張してしまい、肩の力を抜いて笑えなくなってしまうのです。

同じようなことが、たこ焼きにもあてはまると思えます。

今でこそ「大阪名物」などと言われていますが、私の子供時代のたこ焼きのイメージと言えば、夜店の屋台とか、銭湯に行った帰りに民家の軒先で焼いているの
を、親に買ってもらったという程度で、あれはおいしかったのかというと、子供が小腹を満たす程度のものでしかありません。

たこ焼きはどこまでいっても所詮たこ焼きで、小麦粉とソースの味でしかなく、あれをおいしいと思って食べたことはないです。だから、たこ焼きの店に行列ができるというのが、私には今でも理解ができません。

ここでも何度か触れた、道頓堀のたこ焼き「大たこ」は、ついに大阪市の指導に従い、不法占拠であった店を自主的に撤去し、近くのビルで再開したらしいです。

撤去したのは当然で、「遅すぎた」という感想しかないのですが、もう一つ、不法占拠中の賃料相当額をきちんと大阪市に払ったのかどうかは気になります。もしまだだったら、市はきちんと取りたてるべきでしょう。

ともかく、お笑いもたこ焼きも、相当な修練が必要な技術であることはわかるのですが、それを表には出さず、所詮はお笑い、所詮はたこ焼き、くらいのスタンスでやってくれるほうが、私は好きです。

ここ数年は、M-1はじめお笑いが熱くなり過ぎたように思えます。不法占拠のたこ焼き屋も、何の意地だか法廷闘争などして、ずいぶん興ざめしました。

この年でM-1も橋の上の「大たこ」も終わったということで、私の気持ちに一区切りついた思いがしています。

灰皿にテキーラを入れる行為の法的考察


海老蔵事件に触れたついでに、さらにどうでもよい話を続けます。



週刊誌などの報道では、リオン容疑者の知人(暴走族の元リーダーとかいう人)の「証言」が紹介されていて、最も有名なものは、「灰皿にテキーラを入れて飲ませようとした」というものでしょう。

私は、テキーラよりはスコッチが好きなのですが、どっちであれ酒好きの私としては、灰皿にテキーラを入れるなどというのは、酒に対する侮辱であり、もし本当なら殴られても仕方がないと、感情としては思います。

個人的感情はさておき、ここでは灰皿にテキーラを入れる行為の違法性について検討したいと思います。

まず、灰皿にテキーラを入れること自体は、刑法上の犯罪には何ら触れないでしょう(もちろん店の人には怒られるでしょう)。

昔の有名な判例として、料理屋で皿に放尿した行為が器物損壊罪(刑法261条、3年以下の懲役または30万円以下の罰金)にあたるとされたケースがありま
すが、これはおしっこをかけられた料理皿など心理的に使えなくなるためです。テキーラを入れられた灰皿は、洗えばまた使えます。

また、相手を脅すなどして灰皿のテキーラを無理に飲ませると、強要罪(刑法223条、3年以下の懲役)になります。実際に飲まなくても無理に飲ませようとすると、強要罪の未遂になります。

灰皿テキーラを強要して飲ませて、相手がお腹をこわしたりすると、傷害罪(刑法204条、15年以下の懲役または50万円以下の罰金)にもなるでしょう。

また、他の客がいる店内で「俺の灰皿テキーラが飲めねえのか!」などと大声で凄むと、威力業務妨害罪(刑法234条、3年以下の懲役または50万円以下の
罰金)になりますし、「お前のようなヤツには灰皿テキーラがお似合いだ!」などと侮辱すると、侮辱罪(刑法231条、30日未満の拘留または1万円未満の
科料)にもなりうるでしょう。

では、海老蔵の灰皿テキーラが上記いずれかの犯罪に該当するのだとたら、リオン容疑者がそれに激昂して海老蔵を殴った行為は正当防衛になるのかというと、それはまず無理でしょう。

仲間に侮辱を加えられたから殴ってやり返す、というのは、任侠ものや香港のカンフー映画ならよくある話でしょうけど、現実には許されません。

正当防衛(刑法36条で無罪)が認められるのは、あくまで自分または他人に危害が加えられているときに限ります。

たとえば海老蔵が暴走族元リーダーの口を押さえつけて灰皿テキーラを流し込もうとしていて、そこにリオン容疑者が割って入って海老蔵を突き飛ばした、というようなケースであれば、正当防衛となる余地もあるでしょうが、さすがに海老蔵はそこまでしていないと思います。

ということで、「海老蔵事件を追う」シリーズは以上2回で終了します。

海老蔵事件に思うこと

1週間と少し、更新が空いてしまいました。書きたい話題と、書くヒマさえあれば、連日の更新になりますが、この間はその両方がなかったとご理解ください。



さて、この間の話題として、あえて触れるとすれば、海老蔵でしょうか。

歌舞伎は見ませんがヤマキのCMは好きでして、これは海老蔵がそうめんをうまそうに食べるCMで、季節ごとにそうめんの調理方法が違っていて、日曜日の昼
「新婚さんいらっしゃい!」をぼんやり眺めていると合間にこのCMがよく流れるので、遅めの昼ごはんに「そうめん食べたいなあ」と思ったりするのですが、
あの爽やかにそうめんを食べていた人が殴られて大ケガしたのかと思うと、さすがに最初はびっくりしました。

週刊誌レベルでは、殴った人は東京で恐れられている人で、暴走族やヤクザ社会でも一目おかれていて、海老蔵はそういう裏の社会とつながっていたかのような記事も見かけたりしました。

しかし、その後の報道等を見ていると、「驚愕の事実」みたいなものが出てくるわけでもなく、この一件はおそらくどこまで行っても「酒場のケンカ」のレベルを過ぎないのだろうなと思っています。

ケンカなら、なぜ海老蔵は逮捕されず、殴ったリオン容疑者は逮捕されたかというと、それは簡単です。海老蔵は明らかに大ケガしたけど、リオン容疑者はケガしている様子もないからで、現時点で見る限りではリオン容疑者が一方的に暴行したとしか見えないからです。

実際には、海老蔵がリオン容疑者やその「知人」に手を出しているかも知れないし、そうなればリオン容疑者に正当防衛が成立する可能性もなくはない。そこは今後の事情聴取を待つことになります。

しかし、海老蔵の顔の骨が砕けるほどの暴行を正当化するからには、事前に海老蔵側からよほど強度の暴行を受けている必要があるでしょう。もしそんな状況であれば、リオン容疑者またはその知人は救急病院に搬送されていたはずです。

海老蔵が被害届を出した上で、対応を弁護士に任せたのも、当然のことです。ことを大っぴらにせず、内々のうちに話をつけようとしたら、あれだけ一方的に殴られながら逆に示談金をふっかけられたおそれもあるでしょう。

ということで、本件は酒場のケンカにおいて一方が行き過ぎたというだけの話で、あとはリオン容疑者が正当防衛なのか過剰防衛なのか、それとも単なる一方的暴行なのか、今後粛々と捜査すればよい。それがこの事件に対する私の3番目の感想です。

それにしても、「会員制バー」であれば普通に考えて、常連が安心して飲めるところであり、店主はトラブルが起きないよう気遣わなければならないはずなの
に、一部の芸能人(海老蔵を含む)が幅をきかせていたり、ヤクザまがいの人間が出入りしていたりすることが許容されるとは、東京とは不可解な街だなという
のが、この事件に対する私の2番目の感想です。

そして、酒乱の海老蔵を擁護するつもりはありませんが、ヤマキのCMは好きなので、今後も自粛せずに流してほしいなというのが1番の感想です。

ダルビッシュの離婚と養育費 続き

養育費の話、続き。

前回紹介した例として、夫の年収が5~600万円で、収入のない妻が2人の子を引き取って離婚する場合、家裁で調停すれば、夫が支払うべき養育費として8万円程度(2人分合計で)と決められるであろうといった話をしました。

このように調停で取り決められた場合、夫側から不満顔でよく尋ねられます。「不景気でいつ収入が下がるかもわからないのに、それでも決まった8万円を支払い続けないといけないのですか」と。

これに対する答えは「その通り」です。それは別に不当なこととは思えません。逆に、がんばって仕事して年収が倍になっても、決まった金額以上に払う必要はないのですから。

女性からよく聞く不満としては、「将来、子供に何があるかもわからないのに、月8万円程度では確実に安心させてやれない」、というものがあります。

これは、前回書いたとおり、自助努力で何とかしてもらうほかないです。そもそも世の中、幸せな結婚生活を送っている夫婦だって、確実に安心な生活などありえない。
例えば私だって、いつ不祥事を起こして弁護士資格を失うか知れないし、酒の飲み過ぎで死ぬかも知れない、そうなれば自宅のローンも払えなくなるかも知れないのです。

離婚すると「家計」が2つになって、食費や住居費などの生活関連費用が増え、一緒に暮らしていたとき以上に夫婦とも過酷な状況に置かれることになります。それがイヤなら離婚をガマンするか、そもそも、結婚や出産自体をガマンすべきです。

どうしても経済的に裕福な離婚をしたい、という方は、サエコみたいにがんばってダルビッシュくらい稼ぎのある人を捕まえるしかないです。

さてそのダルビッシュ、養育費は相当な金額になるだろうと前回書きましたが、それでも、プロスポーツ選手の選手生命はそう長くないから、ダルビッシュの2人の子供が成人するまでプレーできるとは思えない。

今後彼がメジャーに行って収入がもっと増えるかも知れないし、ケガで引退して収入が激減するかも知れない。それでも冒頭に書いたように、ダルビッシュは決まった養育費を支払う義務を負います。また、仮にサエコがダルビッシュ以上のお金持ちと再婚しても同じです。

ただ、ダルビッシュに限らず誰でも、養育費の支払い期間中に収入が大幅に下がることはあるし、妻が再婚して経済的に裕福になることもある。そういう場合は、夫側から再調停を申し立てて、養育費の金額を下げてもらうことはできます。

逆に妻からも、夫の収入が上がったときには、それを前提に養育費を上げてもらうよう、調停を申し立てることができます。

そのような正式な手続きを踏まずに、養育費の額を一方の事情だけで勝手に上げ下げすることはできないということです。

以上、ダルビッシュ夫婦を勝手にモデルとして「離婚とカネ」についてシミュレートさせていただきました。連続講座をひとまず終了します。

ダルビッシュの離婚と養育費

ダルビッシュとサエコに学ぶ離婚連続講座の第4回は、養育費の話です。
 
現在、ダルビッシュとサエコは別居中のようですが、別居していても夫婦である以上、一家の生活費は互いに負担しあう必要があります。
 
別居中の妻が夫に生活費をよこせと言える法的根拠は、民法にも「夫婦は互いに協力しあわないといけない」とあるからです。法律家はこの生活費のことを「婚姻費用」、略して「こんぴ」と言います(なぜ「こんひ」と言わないのかは不明)。
 
離婚が成立すると、夫婦関係は終了するので、妻に生活費を払う必要はなくなる。しかし、夫婦が離婚しても、親子の血縁関係は一生残ります。
ダルビッシュとサエコが離婚して、親権をサエコに渡したとしても、父親であるという事実は変わらない。父親である以上は、民法上も、その子供を養育する義務を負います。それが養育費支払いの法的根拠です。
 
ですから養育費はあくまで子供に払うものですが、実際には親権者である母親が管理することになるので、その使い道には基本的に父親は口出しできないことになります。
 
その養育費の金額は、協議離婚の際に合意で決めることもできますが、協議がまとまらなければ家庭裁判所で調停を行なうことになります。
なお、子供が何歳になるまで払うかについても、協議で決まらなければ調停となります。だいたい、20歳までと決まる場合が多いでしょう。
 
養育費の金額の決め方としては、家裁に養育費の算定基準があって、夫婦それぞれの収入や、子供の年齢や人数によって、公式にあてはめて計算します。
 
その算定基準はここでは省略しますが、具体的に算定してみたい方は、弁護士会や市役所の法律相談に行くか、街なかでやってる弁護士事務所を訪ねてください。たいていの弁護士は算定基準表みたいなものを持っているので、すぐ計算してくれます。
 
たとえば、ダルビッシュ夫婦みたいに、5歳くらいと0歳くらいの小さい子供が2人いるとして、夫の年収が1000万円、妻は専業主婦で収入なしだとすると、夫が払うべき養育費の月額は合計16万円前後(子供1人あたり8万円前後)です。
 
年収500万~600万の夫なら、単純に考えてこの半分前後です。多いと思うか少ないと思うかは人それぞれでしょう。
妻が子供2人を抱えて、月に8万円もらえるかどうか、という程度なら、女性なら少ないと思う方が多いでしょう。しかし、夫と離婚して子供を引き取ったからには、母親として自立して子供を育てる義務を負うので、不足分は自分で働くなどするしかありません。
 
さて、算定基準にダルビッシュの実際の年収をあてはめると、すごい数字になるでしょう。
彼がいくら稼いでいるかは知りませんが、仮に年収3億とでもします。サエコはタレント活動などでそれなりに収入があるはずですが、単純化のため収入ゼロとします。
これで計算すると、養育費の月額は400万円前後となります。
ま、これは極めて特殊なケースと思ってください。
 
4回目で最終回にするつもりでしたが、養育費のことであれこれ書きたいことが出てきたので、第5回目に続く。