「大たこ」その後~不法占拠続く

ここしばらく、「ダルビッシュ」と「大たこ」のキーワード検索で当ブログに来られる方が多いようです。ダルビッシュの離婚話はあと一話残っていますが、少し前に報道された、道頓堀のたこ焼き屋「大たこ」の話に少し触れます。

 
ここでも触れたとおり(こちら)、大阪市の公有地上でたこ焼き店を営んでいた「大たこ」に対し、今年7月に最高裁で立退きを命ずる判決が確定しています。
 
その大たこ、私も通りすがりに見ましたが、今も道頓堀の橋の上で営業しています。どうなっているのかというと、最近の報道などからすると、以下の事情のようです。
 
最高裁での判決後も、大たこは立ち退かなかったので、大阪市は強制執行の手続きを
とった。そうなると、まず裁判所の執行官が大たこ側に、何月何日までに立ち退きなさい、そうでないと無理やりに撤去します、という申し入れをします。普
通、そう言われると大半の人は期限の日までに自発的に立退きをします。
 
大たこも、「立ち退きました」と、大阪市に伝えたそうです。それを受けて大阪市の職員が現地を見に行ったところ、何と、大たこの店舗は、もとあった場所から数十センチずれた場所で、平然とたこ焼きを焼いていた。
 
大たこ側の理屈は、「立退きを命ぜられた場所からは立ち退きました。今はそれと『別の場所』で営業しています」ということなのでしょう。
大阪市の平松市長は、「ゆでダコになりそうだ」と怒っています(ここでそんなユーモアを込めなくてもいいのに)。
 
大阪市が取りうる対処は2種類あります。
一つは、判決が出ているのだから、それに基づいて明渡しの強制執行を続行すること
です。これは判決の執行力がどの範囲で及ぶかという、やや複雑な話なのですが、常識的に考えて「そこからどきなさい」と命ぜられた相手が、そこから数十セ
ンチ移動するだけで判決を無効化できるというのはおかしい。
 
もう一つは「行政代執行」です。
これまでの裁判で大たこ側に市有地の時効取得が認められなかった以上、数十センチずらしても不法占拠であることに変わりはない。行政権の主体(大阪市)は、司法権(裁判所)に頼らなくても、不法占拠者は自ら排除することができる。
大たこが自ら撤去しないなら、行政が代わりに執行します、ということです。平松市長はこちらの手続きを取ると言っているようです。
 
法律論はともかく、大たこは大阪でも最も有名な部類のたこ焼き屋ですが、不法占拠と断じられても堂々と商売を続けているわけであり、大たこは今や「大阪の恥」となったと、私は思います。
 
大たこ側に、大阪の商売人としての良心とか、大阪のたこ焼き文化を担ってきたという誇りが、もし今でもあるのであれば、直ちに自ら立ち退くことを望みます。

ダルビッシュの離婚と親権・監護権

ダルビッシュとサエコに学ぶ連続離婚講座(勝手にシリーズ化)、第3回です。

第3回は養育費の話にするつもりが、いま移動中の新幹線の中でこれを書いており、手元に資料がないと養育費の具体的な話が書きにくいので、今回は親権の話にします。
 
「おは朝」情報によりますと、ダルビッシュもサエコも2人の子供の親権を取りたがっており、ただダルビッシュは「養育権」はサエコにあげてもよい、と言っているそうです。
 
これは「監護権」のことを指していると思われるので以後この用語を使いますが、民法上、親が未成年の子に対して持つ権利には「親権」と「監護権」があり、離婚のとき、その2つが別々の親に行くケースもありえます。これが何を意味するかを書きます。
 
平たくいうと、親権者は法的な監督を行なう人、監護権者は一緒に住んであげる人だと考えてください。法的な監督とは何かというと、子供の財産を管理したり、子供が商売をやろうとするとき許可を与えたりする権限などがあります。
 
しかし、ダルビッシュの子供は幼くて多額の財産を持っているとも思われず、財産管
理権はあまり意味がない。むしろ養育費をサエコに払えば、そのお金はサエコが管理することになります。また、いまどき未成年で自ら事業をたちあげて商売を
する人も滅多にいないでしょうから、その許可をする権限もまず問題にならない。
 
そもそも現代においては、親権と監護権を分けておく意味はあまりなく、これは戦前の旧民法の遺物であると言われています(内田貴「民法4」など)。
つまり、戦前の家制度では、子供の親権は父親が持つのが当然で、ただ離婚の際に子供がまだ乳飲み子のようなときは、母に預けておくほうが良いからということで、親権とは別に、母親の監護権という概念ができた。
 
男女平等を建前とする今の民法では、親権者を母親とすることは何ら問題ないので、父でも母でも、子供を引き取る方が親権者かつ監護権者になればよいのです。
 
しかし現在でも、親権をどちらが取るかでモメたときに、妥協策として、父は親権、
母は監護権(その逆もありえますが)を取る、という形で協議離婚するケースもあります。私もそういう相談を受けたことがあるし、ダルビッシュ・サエコ間で
もそんな話があるらしい(あくまでテレビ報道ですが)。
 
しかし、ここは私個人の感想ですが、現代の家族制度において、監護権は取らないけ
ど親権だけ取るというのは、せいぜい精神的な意味しかなく、それは本来、親であることから来る様々な子育ての苦労を免れた上で、口先だけ「俺が親権者だ」
と言っているような印象しか持ちえません。だから私が相談されたときも「そんなやり方は実際には無意味だし、ややこしいだけだから、お勧めしません」とお
答えしています。